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鮮度が消える前に〜たったその一言が〜

小学6年生の時、私は不登校になった。
女子グループのいざこざに巻き込まれ、ある女の子をシカトするようにという圧力をかけられた。

初めてのことではなかった。
つい最近まで別の子がターゲットだったのに、ボスの気分でターゲットが変わる。

私はその子を理由なく無視することも出来ず、かといって無視しないことも出来なかった。

そんなことが立て続き、ボスに忠誠を誓うことも、誓わないことも出来ず、ある朝私は、学校に行くふりをして、近所のおばあちゃんの家の物置に隠れて学校をサボった。

それから学校に行けなくなってしまった。
1日、2日と休むと、どんどん学校に行けなくなり、あっという間に10日がたった。

2週間が過ぎると「恥ずかしいから行きたくない」「欠席している理由を周りに説明できない」という気持ちでますます学校に行けなくなった。学校は大好きだったのに。
でも、これ以上休んだらもっと行けなくなる。

進まない足で下を向きながら鬱屈とした気持ちで登校し、下駄箱で上履きを履こうとしたら、男子と目があった。

私が恋心を寄せていた初恋の相手だ。
一瞬目が合ったもの、彼はさっと通り過ぎてしまった。

久しぶりに彼の顔を見れて嬉しくなった。
でもきっと「学校に行けない私」に引いているに違いない。

そもそも誰も私のことなんて気にしてない。
実際、2週間休んでいても誰からも連絡がなかったのだ。

そんなもの。そんなもの。みんな見せかけの友情。

そう思っていたら、彼がふいに私のところに戻ってきて、

「お前なんで学校来てないん?学校、来いよ!」

その一言だけ言って、立ち去っていった。

上履きを握った手にギュッと力が入る。

彼だけだった、当たり前のことを、当たり前に言ってくれたのは。

ぶっきらぼうな物言いだったけれど心配してくれているのがわかった。

硬く縮こまった心が一瞬じわっと緩くなった。
気持ちも頭も上を向いた。久しぶりのことだった。
気にかけてくれる1人がいるだけでどんなに救われるのか身を以て知った。

彼は父親の転勤に伴って鹿児島から東京に引っ越してきた転校生で、その後、卒業式を待たずに地元に引っ越してしまった。
小6の私には東京と鹿児島は外国と同じくらい遠い。
もう2度と会えないのだ、と思ってさめざめ泣いた。

もしかしたら私は、恋心と一緒に、ギスギスした都心の小学校の中で光る、素朴で明るい太陽みたいな彼に、自分の理想を重ねていたところもあったのかもしれない。

最近になってSNSにいたりするかな?と探してみたのだけれど、このオンラインの海の中でも、彼の消息もきっかけも見つけることが出来なかった。

それはそれでよかったのだろうね。
私の儚い初恋は、淡くきれいな思い出となったのだから。

なぜ今頃この話を書いたかというと、
今朝久しぶりにこの夢を見たからという単純な理由。

ついでに思ったことがある。
もしこの夢に意味をつけるとしたらきっとこういうことだと思う。

コロナ第二波、第三波でまた人と人の距離が遠くなりそうな今だからこそ、あれ?あの人大丈夫かな?と思ったら一声かけてみよう。

そういうちょっとしたことで、誰かの闇を救えるかもしれない。

たった1人が気づいてくれるだけで前を向けることもある。

闇の中で、光が見える瞬間。
パッと上をみるきっかけになる。

かつて私が救われたように。

そんなことを感じた朝。
鮮度が消えないうちに書き記しておこうと思います。





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