見出し画像

【感想・要約】ワーケーションの教科書/長田英知

Ⅰ. 感想・気づき

1.リモートワークでのコミュニケーション活性化アイディア

ちょうど最近会社の同じ部署の方たちとリモートワークでの困りごとについて話す機会があり、「雑談が減ってしまった」「情報が入ってこなくなった」「相手の様子が分からないから迷惑かけたら申し訳ないなと思って連絡がとりづらい」という声があがった。

私の会社はリモートワーク=在宅ワークだが、本書のタイトルにもなっているワーケーションを導入するとなったら、コミュニケーション面での不安の声はより大きくなるだろう。

個人的に打開策になると思っているのは、バーチャルオフィスの“oVice”だ。
仮想のオフィスにログインし、他の人のアイコンに近づけると話しかけることができる。話しかけて欲しくないときは、「集中エリア」のようなところにアイコンを置いておけば大丈夫だ。また、雑談という意味では、「雑談エリア」のような場所で他の人たちが話しているところに自分のアイコンを近づけるだけでその内容が聞き取れて、なおかつ参加できるという機能もあるから、オフィスの雑談の再現性は高い。(くれぐれも調子に乗って他の人の陰口なんか言わないように!!)

2.リモートワークでのストレスマネジメントとキャリアカウンセラー

出社していたときに比べてリモートワーク下で孤独感を感じている人は少なくないと思う。
自分の場合は、小さな子供も3人いてうるさいくらい賑やかだからそこまででもないが、一人で生活されている方や、家庭での人間関係が良好ではない方、職場の人間関係が中心だった人には辛いだろう。

私は自分が目指しているキャリアカウンセラーにそんな人たちの心のケアをできる可能性を感じている。組織内カウンセラーの役割として働く人たちのメンタル支援がある。オンラインや必要に応じてオフラインでの面談を通した個別支援や、オンラインでの勉強会・ワークショップを通したストレスマネジメント研修、メルマガ配信によるストレス対処策の情報提供など、やれることはたくさんあるように感じた。

3.信頼か監視か

リモートワークあるあるの1つだと思うが、組織からしたら本当にリモート先で仕事しているのかが分からず、疑心暗鬼になりがちだろう。

本書でもその労務管理上の課題に対して、「信頼と監視のどちらの立場をとるのか」ということを提起している。
個人的には、「信頼」を前提として欲しい。以前読んだ「フロー体験とグッドビジネス/M.チクセントミハイ」でも述べられていたフローに入る条件の中に、以下のものがあった。
・精神を集中する機会が設けられている
・裁量や権限がワーカーに与えられている
「監視」を前提とされてしまうと、潜在意識レベルかもしれないが、プレッシャーや不信用を感じてしまい、これらの条件が満たされることを阻害するのではないか?と考えている。
簡潔に言ってしまえば、いわゆる「働きがい」が得辛いものとなるのでは?と思った。
本書が提案している「マイルストーン管理」すなわち、仕事を時間ではなく成果を挙げているかで評価をしていく人事制度への移行は解決策の1つだと私も思う。

但し、在ってしかるべき「監視」もあると思う。その1つが個々の従業員のストレスマネジメントを理由とするものだ。リモートワーク下では、誰かと顔を合わせることが減るため、どうしても孤独感を感じたり、仕事を抱え込んだりしがちだ。
そのため、メンタルヘルスの具合を観察し、適切なケアをすることが求められる。この役割は、上司(定期的な1on1)や、先述したキャリアカウンセラーが担うことが望ましいと考えている。

4.Work at anywhere anytimeからLive anywhereへ

私が最も魅力を感じたのは、ワーケーションを代表とするWork at anywhere anytimeの先にあるLive anywhereだ。
いつでもどこでも働けるようになれば、どこにでも住めるようになる。
小さな子供がいて、育児や教育を担っている一人の父親としては、子供の成長にとってよりよい環境で子育てをしたい。住みたい地域の要件の1つとして、子育ての支援が受けられたり、教育水準の高い学校があったりすることは大きな魅力だ。
また、将来両親の介護が必要になった時に、地元に戻れることも魅力的だし、趣味などを含めた自己実現のために住む場所を変えられることも魅力的だ。
めちゃくちゃ個人的な話だが、最近はイギリスに住みたい。働きながらロンドンビジネススクールに通ってみたいし、何より週末のプレミアリーグが楽しみである。そして勉強している英語も上達できて一石三鳥くらいに思っている。そんな時代が来て欲しいな~。(もちろん家族の理解必要)

5.ワーケーションもスモールステップで行こう

先述したように私の会社はリモートワーク=在宅ワークなため、ワーケーションの文化はない。しかし、少なくとも自分はやりたいし、もし周りの声を聞いてニーズもあるのであれば、まずは自分たちの部の有志レベルからスモールステップで企画してみたい。
いきなり「ワーケーションやります!」というと「ちょっと待って汗」となりそうなので、そこは最終目標として置き、自宅からカフェ・図書館、コワーキングスペース、ちょっと遠くのワーケーション、もっと遠くのワーケーションみたいな具合で、スモールステップで実施していくことが肝要かなと思っている。もちろん、実験していく中で課題も出るだろうから、トライ&エラーと継続で活動を継続していければと思う。

Ⅱ. 要約

1.ワーケーションの定義

非日常の場に、勤務時間中に、自発的に滞在して、仕事と余暇をミックスして過ごすこと
※出張などの仕事の延長ではなく場所と時間の選択権が本人にある

2.ワーケーションを後押しする社会の流れ

コロナによりリモートワークが急速に普及し、自宅で仕事をする人が増加

①But 決して自宅での仕事環境は快適ではない
例)都心の手狭な部屋では十分なスペースがない、小さい子供がいて集中できない
→ 都心を離れて郊外へ転出する人たちが増加中
But
すぐには引っ越しできない状況にある人たちもいる
→ オフィス・自宅以外の第3の仕事場所が必要
⇒ ワーケーションが彼らの困り事を解決する1つの選択肢となる

②And 通勤がなくなり時間と場所について考えるようになった
→ オフィスの快適性よりも、働く場所と時間の自由度を追及する様になった
⇒ ワーケーションが彼らにとっての1つの選択肢となる

“一人ひとりが働き方、住む場所、コミュニティも含めて自分でデザインする時代が来た”/隈研吾

→ どこでいつ仕事をして、休暇を取るかという場所的・時間的な境目をつけること自体が、もはや意味をなさなくなる

3.ワーケーションがもたらす創造性という恩恵

①アイディアの量は距離に比例する
↓ 研究成果からも明らか
■CLT(解釈レベル)理論
距離の認知が人間の考え方に影響を及ぼし、「距離的に遠く感じられる」物事ほど、抽象的
に思考するようになる
= 日常生活を送っている場所との物理的な距離感があることで、新しい視点を持ちやすくなる

②多様な人との偶然の出会い
イノベーションを生み出すには、様々な視点を持つ多様な人材との交流が重要

ワーケーションが行われている地域において、普段とは異なる新しい人やものとの接点が生まれることで、新しいアイディアや問題を解決するためのヒントを感じ取れる
= セレンディピティがもたらされる

■セレンディピティ
偶察力。予測していなかった偶然の幸運。

4.ワーケーションで望ましいコミュニケーションのあり方

(結論)オンライン・オフラインでの会議よりも文書でのやり取りを重視すべき
例)オンライン文書やメール

人によって会議に出られる時間が違う。グローバルとなれば時差もある。
⇒ 文書化すれば、
  ・意思決定の際に、考えられていることの全体を把握することができる
  ・図表中心のPPTなどよりも、読んだ人によって解釈のずれが起きることも少ない

メールはチャットツールに比べて、コミュニケーションの履歴を確認でき、過去の経緯を追いやすいという優位性がある
※チャットツールは、従来オフィスで行われてきた対面での会議や同僚とのちょっとした雑談をバーチャルの場で擬似的に再現できるイメージで使う

5.ワーケーションの3つのタイプ

①休暇中心=自然型ワーケーション
・仕事内容
リフレッシュがメイン。パフォーマンスに拘らずに済む日常のルーティンくらいがいい。
・場所選び
休暇中にやりたいこと中心に物件を選ぶ

②仕事中心=都市型ワーケーション
・仕事内容
創造性が求められる仕事がオススメ。複数人で行う場合は、ワークショップやディスカッション、戦略的な打ち合わせなど。
・場所選び
複数で行う場合は、広いミーティングスペースがあって1ヵ所に泊まれる場所

③地方創生中心=社会貢献型ワーケーション
・仕事内容
自分の保有するスキルや能力を活かし、地域に価値をもたらせる仕事
・場所選び
地域の方との交流がしたい場合は、家主居住型の民泊やゲストハウスなど。

~用語メモ~

■ブレジャー
ビジネスとレジャーを組み合わせた造語。出張に数日~数週間の休暇をプラスして、仕事のついでに旅を満喫するもの。

■サバティカル
組織に所属しながら職務を離れて取ることのできる長期休暇

■ワーキングホリデー
2国間の協定に基づいて、青年が異なった文化の中で休暇を楽しみながら、その間の滞在資金を補うために、一定の就労をすることを認める査証および出入国管理上の特別な制度

■時間密度の最大化
1日24時間の中で無駄な時間を極力排除して、なるべく意味のある時間に投資しようとする性向

■体験感度の鋭利化
体験の幅を広げて、物事に対する感度を高めることで、見落としていた新しい価値を発見しようとする性向

■メンバーシップ型雇用
就労者のポテンシャルを重視して社員として雇い、ジョブローテーションによって幅広い職種を体験させ、終身雇用を前提にジェネラリストを養成する雇用形態

■ジョブ型雇用
職務・勤務地・報酬などを明確に定めた「職務記述書(ジョブディスクリプション)」をもとに、雇用契約を締結する労働形態。社員の年齢や勤続年数は関係なく、その人自身の実力・スキル・成果が重要視され、公平・公正に評価をすることができる。

■トライブ(部族)型ワーク
仕事を選ぶ際の価値基準が、会社のブランドではなく、どのような人と働きたいかを重視

■有用性と有意味性
by ハンナ・アーレント(哲学者)
有用性
仕事がもたらす結果に価値を見出し、どれくらい社会的に有用であるかということを大事にする姿勢。自分が勤める会社や所属する社会が享受する価値。
有意味性
仕事の結果よりも、その仕事が自分の知性や精神にどのような影響を与え、どれくらい自分にとっての意味があるかを大事にする姿勢。社員自身が内面で享受する価値。

■職務特性モデル
by リチャード・ハックマン(心理学者)、グレッグ・R・オルダム(経営学者)
自分の仕事に意味があると感じることが私たちのやる気を生み出し、仕事に対する高い労働パフォーマンスを得ることを可能にすると定義

■ディーセント・ワーク
働きがいのある人間らしい仕事

■レジリエンス
様々な環境・状況に対しても適応し、生き延びる力

■DX
デジタルトランスフォーメーション。デジタル技術による生活やビジネスの変革。

■アレン曲線
by トーマス・J・アレン(MIT教授)
物理的な距離とコミュニケーションの頻度の間に負の相関性があることを示したもの

■移行現象・移行対象(安心毛布)・中間領域(第3の領域)
by ドナルド・ウィニコット(精神分析家)
・移行現象
幼児が母親に依存している状態から、母親の外部にある独立した存在へと移行する状況
・移行対象(安心毛布)
その移行の際に幼児の拠り所となる対象物。典型的な例としては、毛布、ぬいぐるみ、タオルがある。
・中間領域(第3の領域)
移行対象によって導かれる内界(本人の主観や思い込み)でも外界(客観的事実)でもない、その両方の要素が織り交ざった世界で、現実の世界を受容する際の心のクッションとなるもの。たとえば、幼児にとっての毛布は、柔らかいもの或いは触り心地のよい客観的なモノであると同時に、本人にとって母親や乳房をイメージするものでもある。

■科学的管理法
by フレデリック・W・テイラー
作業に関する基準作業量と、基本的な手順を合理的・科学的な方法で定め、管理者の下で計画的に遂行されることによって、生産性を最大化し、能率的に作業をすることによって、コストの削減に繋げる手法

■360度評価
上司だけでなく同僚や部下からの人事評価が指標となる人事評価制度

■マイルストーン管理
仕事を時間ではなくタスクで管理し、そのタスクが決められた期限までに完了したかどうかで成果を判断する成果管理手法

■消滅可能性都市
2010~2040年の30年に人口の「再生産力」を示す20~39歳の若年女性人口が50%以下に減少する市区町村

■マイクロツーリズム
遠方や海外への旅行ではなく、自宅から1~2時間圏内の地元や近隣への短距離観光を行うこと

■Geographic Concentration of Innovation(イノベーションの地理的集積)
イノベーションが特定の地域に偏在して発生する状況。例として、シリコンバレーや深圳市が挙げられる。イノベーションを生み出す中心となる若年層が生活コストの高い都心部よりも、コストの低い辺境エリアに住むことによって起こると言われている。

■オフサイトミーティング
職場を離れた普段とは異なる場所で行うミーティング

■ビヨンド副業
普段はリモートでサポートしながら、定期的に現地を訪問する副業の形態

■ノマドワーカー
ノマド=遊牧民。特定の場所をもたず、移動しながら仕事をする人々

■アドレスホッパー
働く場所を移動するだけでなく、住む場所も転々とする人々


ご覧いただいた方、ありがとうございました。
本書の購入を検討されている方は以下からどうぞ。
https://amzn.to/3oJvZ9h

いよいよ休職経験談を書こうと思っているので、次回の書籍は未定です。
気の向くままにドライブしてみます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?