映画「1917」を観て感じた、戦争と全編ワンカット映像の相性
映画「1917」すごかったです。
事前情報にあった通り、最初から最後まで全てワンカットで構成されていて、よくぞこれを完成させたな!と心底感心されられました。
この人数のキャストを抱えての長回し。
"一体どれだけの時間をリハに費やしたんだろう..."
こういうことを考えると、撮影でOKテイクが出るまでの労力は、本当に想像がつきません。
それを実際にやりきったキャストとスタッフ、特に撮影部隊へ賛辞を送りたいです。
映画の舞台は第1次世界大戦。主人公は二人の若きイギリス兵。
兄を含めた最前線にいる仲間1600人の命を救うべく、追撃の中止を伝える重要任務を与えられた二人が、任務を遂行するため爆弾や敵兵が潜む戦場を突き進む。
懸念は間延びによる退屈
この作品ではないのですが、
初めて全編ワンカットの作品を観た時、不自然に感じる場面がありました。間延びを感じさせないために、話の展開を盛り込み過ぎていて、展開が急すぎたりしたのです(登場人物の気が急に変わりすぎなど)。
ワンカット映画の懸念点の一つがこの間延び感です。 1シーンが長く感じ、退屈に思ってしまうのです。
最近のYoutubeの多くが、この間延び感(退屈な時間)を編集でひたすら削除すています。なのでYoutubeはよくも悪くもテンポよく進んでいきます。
しかし映画やドラマとなると、このような極端な編集は出来ません。
登場人物の感情の変化などを丁寧に描こうとすると、間をしっかり取ることが重要になってくるからです。(悪い知らせを聞いた0.5秒後に大号泣。みたいなことを連続でされると感情移入ができません。コメディならいいのかもしれないけれど。)
映画やドラマでは、この間を切らずに別アングルのカメラに切り替えたりして持たせます。
ワンカット映画では、さらにこのカメラの切り替えすら出来ないので、カメラが回り込んだり、演者に歩み寄ったり、引いたりして画を作らなければなりません。このカメラの移動の時に、間延びする可能性が出てきます。
(寄りの画からの引きの画に切り替えたくても数秒かかる)
それでも画を変えるためにはこの移動は必要不可欠です。
そしてこの映画もその点は例外ではありません。
間延びを感じさせない理由の一つは、戦場の緊張感
映像を観ていて、画的には間延びしてもおかしくないようなテンポのシーンもいくつかあります。
しかし実感としては全く間延びしているようには感じませんでした。
観終わってからその理由を考えていたのですが、
それはこの映画の舞台が "戦場" だからだと結論づけました。
戦場では、主人公2人がでこで敵に襲われるか、いつ爆弾が落ちてくるか、こういった緊張感が常にあります。
なのでただ二人が歩きながら話しているという場面でも、決して退屈にはならず、どこかハラハラしながら観ることが出来るのです。
映像制作者から見た凄いシーン
作り手として一番凄いと感じたのは、カメラを常に動かしながらも美しい画を捉え続ける撮影力です。
人が美しいと感じる構図を映像に収めるために、シーンごとにリハをして映像チェックして、それから本番にのぞむ。それでも大変なのに、この映画ではワンカットを2時間近く通しで実行しています。
そしてほぼ屋外での撮影で、移動しながら無数にいる演者を捉えることを考えると、おそらく照明はほとんど使っていないのではと思われます。一度でも変な光のちらつきなど見えたら、スタッフの存在が映像の中に感じてしまうので、没入感を作りたいことを考えると台無しになってしまいます。
スタッフはもちろん、シーンに関係のないキャストが映ることも避けなければいけません。屋外の広い平地で撮影されていることを考えると、この部分はかなり神経を使ったんだろうなと思います。
再び言いますが、一体何時間リハしたんだろう。。。
無数のキャストを配置し、照明も使わずにそれらを一つのカメラで美しく捉え続ける。
本当にすごいと思います。
見始めたときは、このシーンで一度カメラを止めれるかな?
などと考えながら観ていましたが、途中からは没入して単純に映画を楽しんで観ていました。
本当にオススメです。
まだの方はぜひ。
ついでに。
ワンカット映像の編集していない感じは、どこか舞台鑑賞に近いものを感じました。
舞台がお好きな方にもオススメです。
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