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離婚して自分の人生を生きていく④


第四章 調停と転職活動

婚姻費用調停2回目+夫婦関係調整調停1回目

思いがけず夫婦関係調整の調停を申し立てられ、申立人と相手方の両方の立場として調停することとなった。今回はソウから調停の部屋に呼ばれ、私は後から話すこととなった。ソウの話が終わるまで待合室で過ごす。30分40分後に、男性の調停委員が「お待たせしました」と私を呼びに来た。

「まず、婚姻費用についての話ですが、ソウさんは支払う意思はあるとのことでした。ご希望は算定表に準じた金額で間違いなければ、次回期日に直近の源泉徴収票を持って来てください。婚姻費用の具体的な額を決めていきたいと思います」調停委員からこう告げられた。

「一方で、別居に関しては納得がいかないそうです。あなたは本当は別居したくないのに、誰かにそそのかされていると話しているの。心当たりはありますか。」女性の調停委員が淡々と聞いてきた。

「・・・・・え?」その時の私は、かなり間抜けな顔をしていたと思う。言われた内容の意味がわからなさすぎて「どういう意味ですか?」と聞き返してしまった。

「あなたが家を出る前によく誰かと電話していたと話していました。ソウさんは、その電話の相手にあなたがそそのかされているから家を出ていったと思っているようです。」調停委員も少し困った雰囲気で私に説明してくれた。

「ソウとは夫婦で話し合える状態ではなかったので、人に相談したりすることはありましたし、お金の無心を断ったらどうなるかわからないと言ったら、危険な時はすぐに逃げたほうがいいとアドバイスはもらったことはありますが、そそのかされてはいないですね。自分の意思で別居しています。」自分ではキッパリと伝えたつもりだ。

「そうなんですね。私たちも、このような状況だったら、他の方に相談されていてもおかしくないですよ、とソウさんにお伝えしたんですけど、、、。あちらは、娘さんやあなたに、戻って来てほしいという気持ちには変わりはないようですが、ユイさんの方は条件を満たせば同居に応じても良いなど、心境に変化はありませんか?」

一瞬考えてみたが、いやいやいや、ない。「・・・今の時点で、同居に応じても良い条件などは考えられません。まずは婚姻費用を決めて別居を続けたいです」

「ユイさんのお話はわかりました。別居の意思は固いということね」女性の調停委員が私の目を見ながら確認して来たので、私も目を合わせて大きく頷く。

多分、私が話していた時間は15分程度で、再びソウが話す番になる。待合室で待っている間、たくさん待っていたはずの人たちが、だんだん減っているのがわかる。ソウの話はいつも長い。毎回こんな感じになるのかな、どのくらい続くかわからないけど、先が思いやられる。

やっと私が呼ばれた時には、調停終了の予定時間を既に過ぎていた。「お待たせしました。先程の件はあちらに伝えました。次回の期日を決めて、本日は終了します。あちらはまだ待ってもらってるので、この部屋を出たら、すぐに帰って下さい。帰りに鉢合わせないように、時間をずらして帰ってもらいます」

ソウは自分の思うように事が運ばず、ヒートアップして興奮状態なのが想像できた。調停委員の顔も心なしか疲れているように見える。私も疲れた。待ち疲れた。

次回期日は一ヶ月後。婚姻費用はいつ支払われるのだろうか、、、。

転職活動

調停2回目の時期と就活が丁度同じ頃だったと思う。
突然の別居をした私だが、当時の私はどんなことに対しても環境を変えることが苦手だった。元々そうだったのか、子どもが生まれてから保守的になったのかは今となってはわからないけど、住む場所も、仕事も、できれば変えたくなかった。

だから、本当は別居するにもソウが出ていって欲しかったし、職場も変えずにシフトを増やしてなんとかなるならそうしたかった。

でも、実際そうはならなかった。

私が子どもを連れて家を出ていくことになったし、職場でも交渉したがシフトを増やしてもらえなかった。人生自分の思う通りにはいかないもんだ。
そういうわけで、自分としては嫌々ながら就活をすることになってしまった。子どもとの生活がかかっているので仕方がない。

働きながらの転職活動で子どもも小さかったので、時間の節約のために転職エージェントを活用した。希望の条件を伝えると、すぐにいくつか紹介してくれた。嫌々始めた就活だったが、始めてみると意外とワクワクしている自分がいたから不思議だ。既に別居という大きな変化があった後で、感覚が麻痺していたのかもしれない。

パートから正社員への転職だったので、どこへ転職しても待遇が良くなることも魅力的だった。
こんな仕事もあるんだ、こっちに待遇もいいな、とか検討してるうちに、あれだけ変化するのに抵抗があったのに、転職へのハードルはどんどん下がっていった。

そして、いよいよ面接。自分の事情については、別居や調停についてはとりあえず伏せたまま、ほぼワンオペ育児であるとだけ伝えた。(使うかどうかはともかく)ファミサポや病児保育に登録し働く意欲をアピールした。

面接などで話すのが苦手で、とても緊張すると思っていたが、意外と大丈夫だった。今までは、面接で受かりたいあまり、自分の伝えたいことが言えない事が多かった。しかし、今回はそうなるわけにはいかなかった。私だけじゃなく、子どもの生活もかかっている。

自分が無理なことについては、面接だろうと難しいと断ろう。そうでないと、結局働き続けることは難しくなるだろう。それで内定がもらえなくても、ご縁がなかったと思って次に行こう。私はいつの間にか、こんな風に考えるようになっていた。

調停と就活の共通点

私がいつもより面接に緊張しなかった理由に、調停の経験があったんじゃないかと思っている。

前にも書いたが、調停はちょっと面接に似ている。調停委員に自分の主張や条件を聞いてもらって、相手に間接的に伝えてもらうのだ。
そのためには、自分がどうしたいか、どういう条件がいいのかを考えておく必要があった。

転職活動でも、全く同じことをした。自分がどのように働きたくて、どういう条件がいいか、というところから職場を選び、面接に行った。考えがまとまっていたので、面接で緊張もあまりしなかったんだと思う。結果的に、一番自分の条件に合っていたところで面接をして内定をもらう事ができた。

人生無駄な経験はないもんだ。調停を経験したことを少しだけ良かったと思えた。

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