紅と緑のおはなし
一緒の場所で生まれたふたり。
だけど、育て方が違ったから別々の道を歩んでいったふたり。
その子たちは「紅」と「緑」という名前をつけられた。
大事に大事に育てられ、一人前になったふたりの門出の日。
紅はかわいらしいお洋服で着飾って、
緑はおとなっぽい着物で背のびをして、
それぞれの道へ歩んでいった。
スーパーの棚でお行儀よく座っていたふたりは、やさしくて素敵なお家へとお引っ越し。
緊張気味なふたりをそれぞれのお家の住人はあたたかく迎えてくれた。
「ようこそ!」「今日からよろしくね」
「きみは、どこから来たの?」
「お名前は?」
それぞれのお家でたくさんのことを聞かれたし、たくさん質問もした。
「ここに住んでる人はどんな人?」
「いつも何して遊んでいるの?」
少しずつお家のリズムにも慣れたふたり。
紅はクッキーやショートケーキとお喋りする15時が好きなって、
緑はおせんべいや大福とテレビを見る15時が好きになった。
紅はティーポットとカップがとてもよく似合うようになり、
注がれる瞬間の、紅い水色が美しかった。
緑は急須と湯のみといつもセットだったし、
湯のみに注がれて、ぬくもりを伝えるやさしさを持っていた。
一緒の場所で生まれたのに、見た目も好みも全然違うふたり。
ふたりなりの幸せを見つけて楽しく過ごしました、とさ。
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