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わたしとあの子の世界

いつも、すこしうつむきがちのかおりちゃんとは、先月の席替えでとなりになった。
朝は「おはよう」から始まるし、休み時間にお話もする。
放課後、一緒に帰るようにもなった。
だけど、目が合わないのは、少しだけさみしい。

肩まで伸びた髪は、まるでかおりちゃんを守る艷やかで芯のある、強い盾にも見える。
でも、その盾は何からかおりちゃんを守っているんだろう?


▽▽
かおりちゃんと私は同じ日本にいるのに、どうやら見てる世界が少し違うみたい。
ときどき、私に見えてないものを見つけて、教えてくれる。

たぶん、目線の位置が微妙にちがうから、視界に入るものも微妙にちがってくるみたい。

だから、一緒に帰った日は発見だらけでたのしい。

道端に咲く花、水たまりに映ってた空、悲しそうに片っぽだけ落ちてるちいさな靴とか。

ちなみに、花の名前と花ことばのほとんどはかおりちゃんから教えてもらった。

私もいろんなものを見たいと思って、
下を見て歩いたけど、そんなにうまくいかないし、
集中しすぎて、人にぶつかることもあった。ので、やめた。

「そんな下向いてても、危ないだけだよ」って苦笑いされちゃった。
そんなことないと思うんだけどなぁ……

「かおりちゃんといると、いつも通ってる帰り道なのに発見だらけで楽しいよ」

その言葉にびっくりしたのか、少しだけ顔が赤くなっている。

「ゆうこちゃんも私の知らないこと、たくさん教えてくれるから楽しいよ」
と、そう言ってくれた。

「実は、ふたりとも相手が見てる世界っていいなと思ってたのかもね。」

これから冬がはじまる。
かおりちゃんはどんな発見をするんだろう、私はかおりちゃんに何を教えてあげられるだろう?
もっと仲良くなりたいなぁと思いながら、かおりちゃんの横顔を見た。

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