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marebito通信、というよりも僕の私信forあなた

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2019年10月の記事一覧

あの店は10月で無くなる

あの店は10月で無くなる

会社の近くの蕎麦屋「やぶ」が今月いっぱいで閉店するらしい。1932年から87年続いてきた店を畳むというのはどういう気持ちだろうか。

ありし日のゴマだれ蕎麦とカツ煮セット

僕がここに通い始めたのは会社に入ってしばらくした頃だったからまだせいぜい7年前といったところか。残りの80年については知らないが、それでも80年が詰まった最後の7年は知っている。いつも入店して「二階空いてる?」と聞くと「大丈夫

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そうだ、キャンプへ行こう その一

そうだ、キャンプへ行こう その一

強いて言えばなんとなくだった。
月10本以上のライブをして、平日は正社員として雑誌の編集をして、なんとなく疲れてしまったのだと思う。
何か俗世から離れたことをしたい。そう思った時に偶然ゆるキャン△を見てしまい、そうなったらソロキャンプ をするしかなかった。
思い立ってから、周りにキャンプ道具をねだり、安めのものは自分で購入した。
3日おきにAmazonから荷物が届いて、一緒に暮らす彼女はおそらく少

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そうだ、キャンプへ行こう その二

そうだ、キャンプへ行こう その二

家で練習をした甲斐があって、テントの設営は十分ほどで終わった。周りから見たら相当あたふたしていたとは思う。

コットや椅子を組み立て、徐々に自分のスペースが形になって行くのは非常に楽しい体験だった。さっきまで更地だった場所に、自分は居場所を作っているのだ。テーブルが少しショボいので、何か代わりになるものがないかを探すと、非常に手頃な岩があった。
これまでの人生で「手頃な岩」という表現をしたのはおそ

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あの子のこと

あの子のこと

あの子は今でも中野の外れの古いマンションの一室で息をしている。
築45年5階建ての2階角部屋、8畳の部屋に3畳のキッチンがあるその部屋は窓が小さい。
隣には大学生の男の子が住んでいたはずだけど、今はどうなっているだろう。僕はその彼に一度も会ったことがない。
いつも薄暗くてカビ臭い階段を登り、同じく薄暗い通路を数歩歩いてあの子の部屋のチャイムを鳴らす瞬間はいつだって胸が高鳴っていた。いつ訪ねていって

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怖い話「こいつを探すな」

えー、僕は今雑誌の編集をしてるんだけど、仕事上であった話
まあ、雑誌なんてかっこよく言ってるはみたものの、簡単に言えばエロ本で、なかなか親兄弟に言えるような仕事じゃないんだけどね
今の時代エロ本なんて買うのは一部のマニアか高齢者が多くて、問い合わせなんかも電話ならまだいい方で手紙だったりするんだよね
まあいろんな人がいて、「いつも読ませていただいてます。今回のモデルの誰それさんは非常に私好みの体つ

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