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だんだん高くなるドライブ #毎週ショートショートnote

わたしが不機嫌な理由は、曇り空が続いているっていうだけなんだけど、パパは、志望校に落ちたのが理由なんじゃないかと思っているっぽい。そりゃあ、いい気分ではないけれど、ほっといてほしい。

ほっといてくれないパパにドライブに誘われてしまった。相変わらず曇り空なので助手席のわたしの機嫌はよくない。パパは流れてくる音楽に合わせながら歌っている。

「だんだん高くなってくるね」

と、山道に入ってパパは言う。山道なのだからそりゃそうだとわたしは思う。曇り空は変わらない。適当に相槌を打っているとき、音楽に合わせたパパの声が高くなった。いつも高すぎて歌えない歌が歌えている。

「だんだん高くなってる気がする」

「だから、山道だからでしょ」

「そうじゃなくて」

というパパの声が明らかに高くなっている。

「なに?」

「わかんない」

ソプラノだ。その声がおかしくて笑ってしまう。

「下がれ〜」

もはや生まれたての声になったパパの声が可愛い。雲がとれて光が刺したとき、わたしは言った。

「下りになったら、戻るよ、きっと」

(437文字)



今週も参加させていだだきました。

人生は上昇していくことだけがよいことではなくて、下っていく中にもキラキラしたものはあると思ってる次第です。

後半戦の人生だからでしょうか。


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