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11月の全短歌75首

1
しあわせとしあわせを混ぜ合わせます
しあわせだけのファーストバイト

2
優しさと優しさを足して2で割るな
ひたすら優しく世界よまわれ

3
キラキラを探すふたりが今じゃもう
オムツ爆買いツアーに出かけ

4
おはようとおやすみまでの今日の日に
「ありがとう」って一度は言えた?

5
海入るときは腰まで浸からずに
足だけにする溢れちゃうから

6
神様に操作されてるゲームなら
そろそろ1-2Bダッシュして

7
テトリスの長棒ずっと待っている
ような人生積み上げている

8
俺がもしビーストならば胸の奥
鳴り続けるよベルという音

9
ぼくたちは恋が不幸の薬だと
習わなかった習わなかった

10
牛乳を飲み干したあとつく髭の
サンタクロースぽさ選手権

11
黒い服纏うあなたは言わずして
「ここから先は入れてあげない」

12
その場所に確かにあった思い出が
地図だけ残して蘇らない

13
コンビニのレジの横からヤツが呼ぶ
ピザかあんか、いや、ほら、ほら!

14
両足の間でたまごあたためる
ペンギンみたいに子が股にいる

15
果物の名前の君が投げる球
あまくやさしくないのが好きで

16
耳たぶに触れてもいいという権利
手にしたときの微熱が星に

17
理由とかきっかけだとかあるけれど
聞かないでほしいこのかなしみは

18
もし昨日死んでいたなら今日のコレ
味わえなかった生きててよかった

19
朝焼けの雲の間に間にいる天使
羽を忘れて人としての日

20
世が世ならというけれども世が世のおかげで
こうなっている

21
伝えたい伝わらないの境目で
おもちゃ蹴飛ばし鳴いてる怪獣

22
風が冬、雲が冬だと言うけれど
紅葉を連れてコンビニ入る

23
別れ際葉っぱの付いたスカートを
見ないふりする君のあざとさ

24
ポカポカという文字鍋のフタの上
曇ったメガネに映るしあわせ

25
飛ぶ機能ないほう選んだはずだけど
恋をしてからずっと飛んでる

26
マフラーの巻き方ひとつで十代は
空も飛べるし宇宙にもいく

27
夕飯はポトフと言われ頷いて
見たことないものポトフと名付ける

28
あの星にあこがれるけどなりたいと
思ったりはしない六等星

29
アカシックレコードのほうにアクセスを
すれば再会できるのかもね

30
注文の仕方に慣れてしまうとき
あのドキドキは帰らぬ日々だ

31
あんたにはなんの力もありません
お天道さんに顔向けできる?

32
あのころは海だったって言っている
場所に寝転び貝になる夜

33
二十年前の恋文スルーするように
既読の跡だけがつく

34
積み上げて積み上げた木を落としては
また積み上げて人生知る子

35
コーヒーと悪魔のせいにしたらいい
夜も眠れず詩とか書くのは

36
リスの子が所持しているのどんぐりを
持ちきれなくてほっぺにためるの

37
一年中緑のままで揺れている
葉っぱのような恋に手を振る

38
わたくしの着ている服が似合う子の
うるむ瞳に映るわたくし

39
追い風の参考記録だった日の
押される背中飛べる気がした

40
現地ではコイン100枚1up、
こちらはひとつでプライスレス

41
いつのまに隣の市まで来てしまい
帰れないかもって黒目が光る

42
酔い醒めの冷たい風が吹いたのに
あなたの小指見惚れて醒めない

43
はずれ棒10本集めて引き換える
伏線回収している気分

44
言葉まだ数えるほどの君だけど
一線級の笑顔で答え

45
全米は泣かないけれど全俺を
泣かせた君は感動の名作

46
ひとり去り心に空いたスペースに
「はじめまして」とあなたが入る

47
パスタでなくスパゲッティが食べたいという
ニュアンスでするプロポーズ

48
マスカケ線我が子にあると知ったときダウン症なのねとじっと手を見る

49
着ぐるみの中にいるひと気になって
外の可愛させつなく見える

50
小さな手小さな指で空撫でる
君の心は地球の呼吸

51
大きめの靴が出番を待っている
君と一緒に歩けるときを

52
難しい話になってきたときの
早く終われの顔する人好き

53
あの人の声に似てると言われても
あの人じゃないこと思い知るだけ

54
洗濯機の中の洋服絡まって
干されてもなお離れずにいる

55
なんとなくいちばんはじめに飛んだだけ
リーダーなんてあだ名はよして

56
サヨナラの文字が駅の売店に並んでる日に
別れた恋人

57
美味しいともぐもぐしながら三歳は
最上級の拍手で称える 

58
写真しか残ってないけど思い出の中の
あなたは動くし話す

59
近づいて離れるけどもつなぐ手は
離さずにいるマイムマイム

60
初恋がどれか忘れてしまうほど
すべての恋が初めてだった

61
和菓子ならギリセーフだとドラ焼きに
手が伸びる君ギリアウトだよ

62
靴ひもが結べるようになったとき
初めてちょうちょが可愛く見えた

63
優しさがないのではなく
使い方忘れてるだけと言っている風

64
新しい打ち方発見したときの
高揚感がいつまでもある

65
星のない街に佇む自販機の
「あたたか〜い」に触れている夜

66
小指からつながる糸をたぐりよせ
私の半分ソファーで寝てた

67
あまりにもあまりにも澄む君の目に
映るくじらが海原をゆく

68
セカンドに転がるボールすべて取る
辻みたいだな君の優しさ

69
よろこびやかなしみさえも友とする
各駅停車の私の人生

70
東京に入った途端に倍速で
歩いてたのにまだ日が暮れない

71
どこまでも歩いていけるこの靴と
別れのときが近づいている

72
ビリビリに破いた中二のときの詩が
誰にも内緒で世界を救う

73
すれ違い別れたふたりも幕降りて
肩を組み合いカーテンコール

74
吹く風が落ちる葉っぱが鳴る音が
生きてることを思い出させる

75
空になりおべんとばこのふた閉める仕草が
君のお礼のようで

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