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大豆にいさん、空をとぶ。

大豆にいさんには、
たくさんの兄弟たちがいました。

みどりいろから
きれいなおうどいろになる頃、
兄弟たちは自分の夢を語りだします。

ある子は「豆乳になりたい!」
またとある子は「お味噌になりたい!」
それぞれいろんな夢に胸をふくらませていました。

そんな中で大豆にいさんは
誰にも打ち明けていない大きな夢がありました。

それは「空をとぶこと」

兄弟の中でも一番お空に近いてっぺんで育った大豆にいさんは
自由に空をとびまわるスズメと友だちでした。
自由なスズメは時々大豆にいさんのいる苗にとまって、
大豆にいさんに色々な外の世界の話を聞かせてくれていました。

「いいなあ、スズメくんは。
ぼくもスズメくんみたいにお空から
色んな世界を見てみたいもんだよ。」

するとスズメはこう言いました。

「大豆くん、それならぼくの背中に乗って!
ぼくが大豆くんを連れ出してあげる!」

そういうとスズメは大豆にいさんをひょいっと背中に乗せて
勢いよくお空へ飛び立ちました。
「うわあ!
ぼく、お空をとんでる!」

大豆にいさんが育ったおうちが
みるみる遠ざかっていき、
あっという間に見えなくなってしまいました。

大豆にいさんは自分の目の前に広がる
見たこともないたくさんの景色に胸を躍らせました。

みつばちが集まる、赤や黄色の色をしたお花畑に
キラキラしたおさかなたちが泳ぐ、川の水。
大豆にいさんは嬉しくてたまりません。

いつもよりうんと高い場所から浴びる
おひさまの光が
大豆にいさんにはとてもまぶしく感じました。

「大豆くん、もっと遠くへ行ってみようか」

スズメはそう言うと
翼を目一杯広げてバサッと
空高く飛び立ちました。

しばらくすると
とても賑やかな音が聞こえてきました。

「スズメくん、ここは?」
大豆にいさんはスズメに尋ねました。

「ここは街だよ。
とっても大きい建物や乗り物がたくさんあるんだ。
ぼくよりもうんと早いんだよ。
それにほら、上をみてごらん」

そう言われて大豆にいさんが上を見てみると、
電信柱の上にはスズメくんの仲間たちが
たくさんとまっていましいた。

「ここにはぼくの仲間がたくさんいるんだ」

スズメは仲間たちのいる電信柱の上まで行くと、
背中に乗せた大豆にいさんを仲間たちに紹介しました。

それから大豆にいさんは
スズメの仲間たちに挟まれながら
色んな街の話やスズメの家族の話を
たくさん聞かせてもらいました。

しばらくスズメたちの話を聞いていた大豆にいさんは、
自分の兄弟たちのことを思い出しました。

「みんな、今頃なにしてるかな・・・」

大豆にいさんは
兄弟たちに会いたくなってきました。

「スズメくん、お願いがあるんだ。
ぼくをおうちまで連れて行ってくれるかい?」

スズメはにっこりと笑って、
「もちろん!」
そう言ってゆっくりと翼を広げました。

それからスズメは
大豆にいさんと見た景色をゆっくりと辿りながら
大豆にいさんをおうちまで連れて帰りました。

大豆にいさんのおうちでは、
兄弟たちが大豆にいさんの帰りを待っていました。

「スズメくん、今日はありがとう!
スズメくんのお陰でぼくの夢がかなったよ、ありがとう!」

そう言うとスズメは嬉しそうに
「それはよかった!
大豆くんの新しい夢をまた聞かせておくれ」

スズメは大豆にいさんの兄弟たちにもお別れを言って
また空高く飛んでいきました。

「にいちゃん、おかえり!」
「ぼくらにもにいちゃんの話、聞かせておくれよ!」

兄弟たちは無事に帰った大豆にいさんに
口々にそう言いました。

「みんなただいま!
やっぱりぼくはここがいちばんだ。」

大豆にいさんは兄弟たちに囲まれながら、
自分の新しい夢に胸をふくらませました。

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