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 二〇〇四年四月一日、紀香が配属されたのは都内にある大学医学部附属病院。幅広い分野を扱う大病院だ。その糖尿病専門内科の医療事務員として、外来患者の受付係をすることになった。糖尿病専門内科には一日千五百人もの患者が来院する。進んだ人工透析の設備があり、透析のために通院する患者が多い。

 紀香の直属の上司は、鈴木聡一(すずきそういち)主任。くせのない四十歳。同じ受付に配属された新卒に、曽根崎真理子(そねざきまりこ)がいた。さっそうとした女性。科のトップは五十歳の畠誠二郎(はたけせいじろう)教授。その下に、准教授、助手の医師が十人、ほかに看護師などがいた。

「辻原紀香です。人の健康のためになる仕事がしたいと思っていました。一生懸命がんばりますので、よろしくお願いします」

 背は高めで面長の整った白い顔立ちでセミロングの黒髪をした、この新人の自己紹介は、その場にいた者に「実に前向きですがすがしいあいさつだ」と受け取られた。

 新人研修で、病院の掲げる立派な理念を聞きながら紀香は、患者に好かれる受付係を目指そうと思った。


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