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今年も続く人員削減。この機会に知ってほしいこと

2022年秋から米国のIT大手企業が大規模人員削減(レイオフ)を続けてきましたが、この動きは2024年に入ってもまだ終わっていません。

1月には、セールスフォース米国本社がまた従業員700人を削減することが報じられました。マーク・ベニオフCEOは昨年8月の決算発表で、「レイオフは終わった」と宣言していましたが。日本法人(日本年金機構への届出では2024年1月20日時点で3275人)への影響はどれほどになるでしょうか。

日本年金機構に届け出された被保険者数の推移から、日本法人では2023年1月以降、毎月数十人~100人程度のペースで削減されたとみられます。12月以降は削減ペースは緩やかになっています。

人員削減を行う企業の株価は上昇傾向で、AI活用が進むことを期待する向きもありますが―。

この機会に知ってほしいことがあります。

人員整理については、個々の感じ方や影響は様々で個人差が大きいです。いつリストラ対象になっても次々とオファーを得て高額パッケージを手に転職していける人が注目される一方で、そうすることのできない人、1年以上、場合によっては何年も再就職にたどり着けず大変な思いをしている人がいるということ。

後者の人はなかなか可視化されません。とりわけ大変な思いをしているのが、産休・育休中の人、障害者、シングルマザー、高齢の人、ハラスメント被害者、メンタル不調者。

筆者は、苦しかった経験をしてきた発達障害の雇用やキャリアの問題の当事者です。それこそダイバーシティ&インクルージョンやフィランソロピーにトップがコミットメントしたグローバル企業で、発達障害の診断書や合理的配慮事項を提出してジョブコーチの定着支援を受けていたにも関わらず、数か月で「仕事を覚えるのに時間がかかる」とロックアウトに遭うという経験をしました。朝出勤したら突然会議室に呼び出されて雇用終了を告げられて、荷物整理も許されずに人事に連れられてオフィスから強制的に出され、荷物は自宅に送られる(当時はコロナ前で毎日出社だった)。これを「ロックアウト型退職勧奨」といいます。歴史的にも米系外資企業ではこうしたことも何気なしに行われ、「厳しい」で済まされてきたということです。筆者はそれからは、35歳を過ぎての再就職でとても苦労し、役所や社会福祉協議会に通って生活資金を援助してもらったり、高齢の両親にも多くの負担をかけてしまいました。

今では本場のアメリカでも、こうしたやり方は働く側に配慮しない無神経なやり方だと批判が高まって、より望ましい人員整理のあり方について具体的な議論が進められるようになってきている、ということです(参照:「もうコミットなんてしない」Z世代の働き方。タイパ追求の先にあるキャリアのリスク)。

そうしたことが一種の原体験となって、同じく米系外資を舞台にした「セールスフォースの調査報道」につながっていきました。働きがいづくりやSDGs、「社員は家族」と考えるカルチャーで優れたイメージを築いた企業で、筆者と同じ発達障害がありながら障害者雇用で入った女性が「会社で無理な働かせ方やひどいいじめに遭い、うつ病休職に追い込まれ、雇い止めされた」と裁判を起こした(2023年9月に和解、解決金は210万~280万円と推定。女性は今も再就職がかなわずにいます)、裁判が進行するうちに大リストラも来たりして、他にも野放図な解雇や退職勧奨が繰り広げられ、告発者が続々と名乗り出てくる(うち1人は訴訟が継続中)、というストーリーです。

筆者が発信していくうちに、マイノリティ・マジョリティ問わず数々の声が寄せられるようになりました。

筆者は、相手の心の機微に反応し、対話することに重きを置く考えでいました。相手の感情を封じるのではなく、あるがままに受け止めながら、です。

筆者は、リストラ局面で様々な形で「有害なポジティブさ」が現れるのも気がかりに思っていました。例えば、自分が職を失うことへの当然の不安や会社のやり方への不満を表す人に対して、「外資系ではそういうことに備えて準備しておくのが作法だろう」というような意見が出されるのを見かけることがありました。「会社に寄りかかるのではなく、しっかりと自分の足で立つのが大事だ」ということを言いたいのでしょうが、聞く側からすれば緊張しますし、言いようのない疎外感を持ってしまう言葉だと思いました。

人員削減は全体の働きがいに悪影響を及ぼすことは、もう目を背けられないです。1月25日、転職口コミサイトOpenworkの「働きがいのある企業ランキング」2024年版が発表されましたが、人員削減した外資系ITは順位を大幅に下げ、セールスフォース(約500人削減)は昨年4位から24位、グーグル(約200人削減)は昨年2位から50位以内にも入らずでした。現実を直視したいです。

手続きの問題、転職に困難を抱えやすい人の境遇、有害なポジティブさ、これらは人員整理に潜んだ雇用やキャリアの社会課題と考えています。

そんなことを思いながら、発信を続けて、いまでは、筆者の存在がきっかけとなって、救われたという人、今後の身の振り方を考えることになった人、誰かに聞いてもらえただけでも心が軽くなったという人、表立って言えないけど応援しているという人も。

今年はその輪をさらに広げていきたい、と思います。

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