「直感」文学 *珍しき自然災害*
「台風が近づいてるってよー!」
リビングでテレビを見ていた母の声が、自分の部屋にいた私の元まで届いた。声量から言って、私へ向けた言葉であるのだということは容易に分かる。
「そーなの!」
私はなんとなくその言葉に答えてみたけれど、台風が近づいていることくらいは私だって分かっていた。ニュースくらいは一応目を通しているのだから。
台風がこの町に来るなんてもう随分と久しぶりなんじゃないだろうか。私が覚えている最後に来た台風は、もう十年以上前だと思う。その台風だって、確か二十年ぶりとか言っていたような……。
そんな町だから、台風に対しての考えが甘い。
皆大して危機感なんて感じていないけれど、なんだか少し浮かれているような。
なんだかお祭りに行く前みたいな感じで、私は少し不服に感じられた。
「学校大丈夫かしらー?」
母の声はまた私に向けられていたけど、私はその言葉に答えなかった。
大丈夫かどうかは分からない。
今は、その台風が来るのをじっと待つことしかできないのだから。
私が窓から外を見上げると、いつもより雲の流れがずっとずっと早かった。
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