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「直感」文学 *遠くから見た、いつもの人*

 同じ家に住んで、同じものを食べて、同じ布団で寝てる。
 僕はあの人のこと、ほとんど全てを知っているって思ってた。

 偶然、彼女を街で見かけた。出版社で働く彼女は、いくつもの書類を腕に抱え、もう片方の手には携帯電話を持ち電話をしている。渋谷の街を忙しなく歩く彼女は、いつも家で見るグータラな彼女とは一味も二味も違った。
 テレビは付けっぱなしで寝ちゃうし、布団はちゃんと掛けてない。トイレを出た後はいつも少しドアが開いたままだし、食器を洗ったってちゃんと泡が流せていない。
 そんなどうしようもないあの人のはずなのに、街で見掛けた彼女は仕事もプライベートも充実した人にも見えた。

 僕は彼女の全てを知ってるって思ってた。
 だけどまだ、僕は彼女を全然知らなかった。

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