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「直感」文学 *輝いていた時間*

 テープのようにぴったりと貼り付いて離れない。
「もっとくっつけないのかな」
もうこれ以上どうやってくっつくというのだ。と真に思わせるくらいに彼女は僕のすぐ側にいる。
「もう無理だこれ以上」
「だって、まだこんなに離れてるのに」
何をどう見たら離れているというのだろう。僕たちはこれ以上ないくらいにくっついているじゃないか。
「ごめん、ちょっと離れて欲しい。トイレに行きたい」
「無理」
「いや、こっちも無理」
「ううん、こっちの方が無理」
どうしようもない日曜日だった。こうやって流れていく他愛ない日曜日は、きっとそう長くは続かない。いずれ僕は煙たい存在に扱われる日がくるかもしれない。自分のことを都合よくお金を引き出すATMくらいにしか見られない日がくるかもしれない。
 だから少しだけ噛み締めておこうか。今はとても面倒だけど、この微かに輝いている時間を。

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