「直感」文学 *ある一点に*
ひとつの部分をずっと見続けた。
その一点だけに集中するように、ずっと、ずっと。
そうしているといつの間にか、いつか見えていた他の場所には何も見えなくなってしまう。
僕は今、その一点以外の物事の判別が付けられずに、その一点だけが僕の頭に訴えかけてくる。
そこはただ一つの、本当になんでもない一点。
その一点に溶け込むようにして、ただ、静かな眼差しのままで、そこにある物事の全てを一身に背負う。
「どうしたの?」
ミズキの声で、僕はハッと我に返って、顔を上げた。
ミズキの顔はただ疑問のまま、僕の顔を見続ける。
きっとその一点は、今僕自身であるのだろう。
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