「直感」文学 *ある寒い日の一片*
「寒いね」
マナは体を小刻みに震わせながら、僕の隣でそう言った。
厚手のストールを首にグルグルと巻いて、今にも顔が埋もれてしまいそうだ。
それ程ストールに巻かれていても、まだ寒いのだろうか。
「ああ、今日はまた一段と冷えてるよな」
そう言う僕もまた、体を震わせていた。
埋もれる程ではないけれど、僕だってマフラーを巻いている。
しかしそんなマフラーなど、冷えを凌ぐほんの一片の救いにしかならなかった。
「あともうちょっと」
マナは白い息を吐きながら、そう言った。
「ああ、もうすぐだ」
僕はそう答えながら、腕時計に目をやった。
あと5分……。
あと5分で年が終わり、年が始まる。
来年もマナと一緒にいられるだろうか。
ただそう考える事ができる。僕は、それだけで十分だった。
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