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創作に対する妄想力(その3)

調理法を知る


 申し訳ないことに、更新が予定より大幅に遅れてしまいましたが、
前章では実物と妄想のギャップを楽しみながらデザイン力を磨くというお話をしましたが、インプットの過程では実物と対峙することが重要な対象もあります。それが、「色」と「素材」です。
 
yuhakuの「色」を生み出す際には、絵画や風景からインスピレーションを受けています。
絵画を鑑賞することによって生まれる心象風景の彩りは、新たな発想につながります。絵画には質感があり、その質感が臨場感を生み、作家の性格や作品に込める想いが伝わってくるため、出来るだけ実物を見るために美術館にはよく足を運んでいます。
一方、風景は実物そのものではなく、あえてWEB上の画像を元に発想につなげています。※加工している画像が特に◎です。
実際に最も美しい風景を目にしようとするには、移動に時間も費やしますし、なにより季節、天候、時間帯など条件が揃わないと難しいですよね。そのため画像に頼る一つの要因ですが、自然の色味をそのまま製品に用いると意外に淡い色のために浮いてしまったり、製品イメージと合わないケースもあるのです。
そのため、加工された画像のように自分の中で誇張して昇華させた風景を「色(グラデーションカラー)」としてアウトプットすることでイメージに近しい色を生み出すのです。
わかりやすい表現としては似顔絵は特徴的なパーツが誇張してあるために”しっくり”くると思います。人は目立つものに視点が行くため、実際のものよりも、誇張されたイメージの方がリンクしやすくなるのだと思います。


「素材」は実物と対峙し、見て触れて匂いや音まで五感をフルに使い感じることが重要です。
特に、天然素材との対話は同じ素材でも部位により全く違う特性を持ちます。生きていた時、どのような環境で育ち、どのような働きをしていた部位なのか、身体を守る部位なのか、柔軟性が必要な部位なのかによって、その特性が見えてきます。暑い気候と寒い気候では全く異なりますし、四季のある地域での特性もあります。木材、革、繊維など、一つ一つ掘り下げてみると、その特性が分かってきます。
素材を切る、曲げる、折る、漉く、こする、濡らす、染める、などたくさんの手法を通して物性を知ることが大切です。料理に例えるなら、たくさんの調理法を知ることに近いでしょう。そして、その素材の持つ元々の特性を理解した上で、調理に取り掛かるのです。調理ひとつで仕上がりは大きく異なります。より硬くしたり、柔軟性をもたせたり、耐水性を持たせたりなど、素材に更なる特性をもたせ、材料は出来上がっています。
 
よく、素材ありきでデザインするのか、それともデザインが先なのか、と質問を受けますが自分はどちらからもあります。素材に込められた理念を製品に落とし込む素材ありきのデザインパターンと、製品ビジョンから始まる理想の素材探し(または素材づくり)というパターンもあり、どちらを選んでも様々な壁が現れますが、そこを乗り越えてこそ良い製品となります。


 
 
次章「1日100デザイン」 (11月末日更新!)

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