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輪廻転生をアートに

リユース、リユーズ、リサイクル。
サスティナブル、SDGs.

今、こうした言葉たちは世界的に普及しつつありますし、そのような取り組みをしていることは「立派なこと」のような風潮すらあります。
確かにこれらは、1人1人が真摯に向き合っていかなければならない課題です。
しかし、『 サスティナブル 』をテーマとして掲げることは、本来、地球上の生物として恥じるべきことなのだろうな、と思います。

すべてのものは輪廻転生する。
自然界では常識です。その当たり前のことが、人間界ではできていない。
それが、今回このテーマについて書くことになった要因であり、今、世界的に『 取り組み 』として対応していかなければならない数々の問題の、原因でもあります。
まずはそのことを、しっかりと受け止めたい。

中学時代から、環境問題には興味を持っていました。
はっきりとしたきっかけは忘れてしまいましたが、ゴミの分別だったような気がします。
「ゴミを焼却するときの有害なガスにより、酸性雨が降る。だからしっかり分別しましょう」
そんな入口から環境問題に対して興味がわいて、『 Newton 』を読んだり、酸性雨検査キットで雨を調べたりしているような子どもでした。
現在、皮革業界にいることが、その意識の延長線上にあるのか、それとも単なる偶然なのかはわかりません。
どちらにせよ、食肉の副産物としての革に『 命 』を感じながら扱っていること。
その意義を、大切にしたい、と日々感じています。

サスティナブルな行動というのは、日常生活のありとあらゆるシーンにあります。
たとえばプライベートでは、家事をする際、洗剤や水をできるだけ使用しないように、キッチンペーパーを使って汚れた皿やフライパンをきれいにしてから洗っています。これは豆知識なのですが、キッチンペーパーに水を含ませてから油をこすると、驚くことにほとんどの油が分解されていくのです。 どんなクリーナよりもきれいになり、かつ、経済的です。もちろん、使用する水や洗剤の量も減らせます。
そんなふうに普段から意識しているので、会社で出る廃棄物に関しても、削減、あるいは再利用する策はないか常に考えています。

個人として、経営者として……

では、表現者としての自分には何ができるだろう。
そう考えたとき、それはやはり、アートでした。

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始まりは昨年のことです。
2020年2月に銀座三越にて発表いたしました展示『有機質と無機質の均衡』
この展示では、今までの人生で影響を受けた物を集結させ、表現しました。
祖父の手がける盆栽が日常の一部だった幼少期、建築や絵画を学んだ学生時代。そして、革製品に携わる現在。 いわば『 仲垣個人の半生 』を形にした展示です。
このときの作品に使用した盆栽は生きた盆栽でしたが、残念ながら革との相性は非常に悪いものでした。
盆栽は水と日光を欲しますが、その一方で革は水に弱く、日光では色焼けを起こしてしまいます。

展示が終わり、次回作の構想を練りながら「どうにかならないものか」とインターネット検索しました。
するとそこに、『 DRY BONSAI 』という初めて聞く言葉が。
早速、その第1人者となる『 藤田茂男 』さんにコンタクトを取り、その精神や手法を学びました。


『 DRY BONSAI 』。それは、枯れてしまった盆栽に、プリザーブドさせた枝葉を組み合わせた新しい表現のスタイルでした。
枯れて落葉しきった盆栽に、もう1度枝葉をつけていく。まるで生け花のような手法でありながら、自分が普段やっている、革の染色のような感覚もありました。

『 命をなくしたものに、再び命を与える 』
それは偶然にも、自分の仕事と全く同じ考えだったのです。

そんな風にして『 DRY BONSAI 』にこれ以上ない親和性を感じたことで、今後の作品は全てこのドライ化した盆栽を使用していくことに決めました。
と、同時に、作品に使用するものには、できるだけ「再生させたモノを使用する」ことが目標として定まったのです。

食肉の副産物としての革は、使わなければ捨てられてしまいます。
しかし、どれだけ『 命 』を感じながら丁寧に扱っていても、生来のキズなどにより、製品化できず、長年ストックされている革があることも事実です。
この作品で使用する革は、そんな風に染色作業の中で製品には使用されなかったモノたち。 パネルにも再生MDFボードを使うなど、制限あるなかでの表現にチャレンジしています。
また、作品の梱包には再生紙を利用。本来であれば、立派な化粧箱に入れることが好まれるのでしょうが、あえて必要最低限の作りにしました。

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そして実は、作品タイトルにも仕掛けがあります。

バイラク、ディジュべー、スカーマ、モサ……、呪文のようですが、これらは本アートシリーズの作品名であり、実在する言語でもあります。
現在、世界では話者の減少などにより、消えつつある言葉がいくつもあります。
作品タイトルを考えるなかでそうした言葉の存在を知り、「言語とその文化の再生」を考えなければ、とも思いました。 しかも、偶然か必然か、これらの言葉たちの持つ意味は驚くほどよく、作品たちのありように合致していたのです。

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そんな数々の試行錯誤と「再生」への想いを込めた作品たちを、きたる5月1日に『 Tomohiro Nakagaki ≠ yuhaku 』としてローンチいたします。
革も、枯れてしまった盆栽も、再生資源も。本来ならば捨てられてしまうもの。
しかし、どんなに『 再生 』をうたっても、見る人に望まれなければアートもまた、『 不要なもの 』と化してしまいます。
資源を使う全ての行動には、責任が伴います。それは、アートを生み出すという行為すらも、例外ではないのです。

サスティナブル。持続可能な、共存共栄。
それは、地球に生を受けた者としての責任を、そして命をいただく者としての責任を、「正しく果たしていく」ということなのかもしれません。

自分にできる限りの務めとしての『 サスティナブル 』を、アートで表現した今期の『 Tomohiro Nakagaki ≠ yuhaku 』
  yuhaku直営店で展示していますので、お近くの店舗まで足を運んでいただけますと幸いです。

ぜひ、命の新たな息吹を感じてください。
https://yuhaku.co.jp/f/Artofyuhaku

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Photographer:Tomohiro Nakagaki

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