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こだわりが生んだ財産

よく、どうして革の染色を始めたのか、どうしてグラデーションカラーを取り入れたのかを聞かれるのですが、いくつか理由があります。
染色をやってみようと考えたきっかけとしては、気に入った色の革が売っていなかったのです。
そこで、「無いなら自分で作ってしまえ!」と思い立ったのがきっかけでした。

しかし、この変なこだわりは苦難への導きでした。

そうです...全くうまく染められなかったのです。
その当時はインターネットの情報も少なく、まずは刷毛を使い染色してみるもムラが酷く、正直見るに耐えないものに...
次に全体を漬け込み染色すると、乾いてみると固くてカッチカチ!!!
全く使い物になりません(泣)(泣)(泣)

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次々と仮説を立てて実行するも失敗ばかり。
当時はジリ貧だったために失敗してもなんとか使える革に出来ないかと、そこから更に試行錯誤しましたが、自分の望む色にはなりませんでした。しかし、その失敗の連続の中にもいろいろな発見がありました。

中でも非常に大きな学びは、染色した革は過乾燥を起こし固くなってしまう事を学び、また元の革のしなやかさを取り戻すためには、栄養分を十分に与えることが大切だということでした。
その学びはyuhakuの染色にとってとても重要な要素であり、
現在では栄養分だけでなく革を内側から守る成分も一緒に浸透させるところまで昇華させています。

しかし、いろんな発見はあったものの自在に染色出来ないことには、全くの無意味...
そこで、気づいたのです。って、気づくのが遅かったのですが...そう、グラデーションが解決策だったのです。
イタリアやフランスの靴でよく見られるあのグラデーションです。
そうと決まれば、「鬼に金棒」ならず「ユハクに絵画?」!!
元はと言えば、絵描きになりたいがために大学を中退した自分です。
絵を描く経験と感覚で染色すると(ここでも多々試行錯誤はありましたが)色の変化があることで味わいがあり、華やかさに加え奥深さもある革が出来上がりました!!!

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ここで生まれたイタリアなどの技法をまねて染色したグラデーションには、一つの特徴がありました。
それは、他では全くやっていない染め方だったのです。
誰にも教わること無く、試行錯誤し出来上がったグラデーション染色は唯一無二のものでした。
教わっていれば、きっともう少し楽なはずの道のりだったのでしょう。
しかし、教えを乞わずに辿りついたこの染色方法は靴の色付けと違い、全て液体染料で染め上げ、革の中で色留めをする加工をしているため、革小物としても使用できる素材を生み出したのです。

自分の色へのこだわりと、無知だったこと、貧乏だったことが重なり合ったために生まれたyuhakuの革づくりの技術は、
自分にとっての財産と言えます。


新004


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