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コスト意識と働く意識(その2)

前回、売上に直接つながる部署の定量的な成果の求め方を述べましたが、企画、MD、広報、人事、経理などの部署は?という質問が来たため、お答えしていきます。

まずは、企画。自分が関わった商品の年間売上をベースに考え、
「年間売上 x 5%~10%」を自身の生み出した利益と考えます。
具体的には、商品企画の場合、弊社のように定番的に3年以上継続し販売していく会社であれば、着任してから2.3年は10%、5年以降は5%程度と考えて下さい。
大量に生産しシーズンごとに商品の入れ替えのある会社は、規模にもよりますが、3~5%で検討いただけると良いかと思います。
※シーズンごとの入れ替えには在庫の処分も発生するリスクがありますので、そこも頭に入れておいて下さい。

技術開発においては開発から5年は10%、5年以降は5%程度を生み出した利益と考えると良いでしょう。
特許の使用権も一般的に5~10%でおこなわれています。
また、デザインに関わった割合に応じて係数を定めます。
例えば弊社においては、こちらのような割合の関与係数としています。

デザイン:素材選定:カラーデザイン:コンセプトメイク=4:2:2:2

そのため、「年間売上x5~10%x関与係数(%)」とした数字が給与の1.5倍~2倍であれば合格ラインです。
上記の考え方から、企画や開発業務従事者は提案したものが定番商品になれば長年にわたり利益が生み出せますが、ヒット商品が生み出せない場合はその分の損失についても考えなければなりません。
利益回復のための期限から考えると3~5年が限度で仕事から外される可能性もありますので、その意識を持って企画に取り組むことが重要です。

MD及び広報は関わる範囲が大きいため、 成果の算出が難しい領域です。
関わっているブランド全体の売上をもとに、利益の伸長額(伸長率)を大きなポイントとして求めます。
売上を伸ばしても、掛けている経費が大きすぎると利益が伴わず頑張り損です。使用する経費に対して効率よく利益を生み出し、成果の見える化を行うことで、自身の仕事を定量的に把握できるだけでなく会社へのアピールにも繋がります。

経理や人事などの管理部署は会社全体の利益から考えます。
経理は経費や売上利益を社内の誰にでも見える化することで、社員のコスト意識向上が可能な部署です。どこに経費が掛かりすぎているのか、どの分野が利益を生んでいるのか社内に周知することで、全員で経費コントロールを行えるようになるからです。
人事は雇用、組織配置の管理はもちろんですが、企業理念を浸透させることも会社にとって重要な役割と言えます。人と人との関わりは定量的に示すことの難しい分野ですので、定性的な活動報告をまとめておくことをおすすめします。

このようにして、会社の仕事というのはさまざまな部署の繋がりによって成り立っています。そのため、時として自身が着手していないにも関わらず仕事が回っている、という状況も起こり得るかもしれません。そのような仕事は会社の力であり、個人の力ではないため、当然、成果にはなりません。
担当になっている以上は「やらなければいけない仕事」であるとまずは認識していただき、ご自身の担当領域を見直してください。

コスト管理を行うと、自ずと業務の効率化を意識できるようになります。
生産性の向上により削減されたコストは新規事業や設備投資など、本当に必要な部分に財源を充てられるようになります。
毎月の生活費はやりくり上手なのに会社の経費は意識していないという方は、「会社のお金は自分に関係するお金」という意識を持ち、自分事にすることが重要です。
事実、会社が豊かになれば昇給や賞与アップもより現実的になりますし、意識が変われば行動が変わります。小さな行動の積み重ね方、削減できるコストはたくさんあります。

簡単なことでは
・事業ゴミには費用がかかるので、ゴミは袋がいっぱいになるまで捨てない。
・人がいないのに電灯、エアコン等を点けっぱなしにしない。
・送料を考え、何かを発注する際は1点でなくまとめて発注する。
・梱包物は規定サイズを確認し、送料が安くなるようであれば小さく梱包する。
・資料はできるだけデジタル化し、コピーや印刷が必要な場合は白黒&両面印刷を設定する。
・購入品は新品にこだわらず、消耗品は低価格なものに切り替える。

などなど、考えればたくさん出てきます。
ただし、経費には倹約しすぎてはいけない項目があります。
それは、「利益を生み出すもの」に対しての経費です。

たとえば弊社では「手作業による染色」を主として行っていますが、手作業でなくてもよい作業においては、道具や機械などを導入することで時間短縮とクオリティの向上に繋げています。
捻出した時間によって生産性を高め、人の手でしか実現できない作業に対して十分な時間を取ることで、作業の満足感も生まれます。クオリティを保ったまま工賃が下がればお客様にお届けしやすい価格になり、次の仕事にも繋がります。

企業を運営していると、先に費用が発生するケースがほとんどです。
良い商品を企画しても納得性のためにはサンプルが必要です。
せっかく良いものを作っても知られなければ意味がないので、広告が存在します。
しかも、それだけ手を打っても成果に繋がるとは限らないのです。
未来のことは誰にも分かりませんし、思い通りに進まないのは当然です。
その中で、利益を生み出し、黒字にするための方法を見つけるのです。
何ヶ月後もしくは何年後に収益化を考えるのか。
未来のビジョンがあってこその経費なのです。
まずは定量的な「未来の予定表」を立て、半期毎に都度修正し、経費管理と利益管理をしていきましょう。それが、ビジネスを行うための重要項目であり、成功への道しるべになります。
「ストーリー」や「想い」によって意識は成長したとしても、行動しなければよりよい会社作りは実現しません。そのため、何をどうすれば良いのか定量的な数字で示すことも大切だと考え、今回はこのようなテーマのブログにいたしました。


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