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言葉って、凄い。 書評その1

こんにちは、ゆごたんです。皆さま、どうお過ごしでしょうか。

外出自粛ムード一色の世の中ですが、自宅でもやれることはたくさんあります。みんなで乗り越えていきましょう。


唐突ではありますが、今回から読んだ本についての書評・ブックレビューなるものをやって行こうかなと思います。理由は、毎日パソコンに向かうのは仕事や連絡が主で好きなことに使う時間がないため、その時間を増やそうという狙い。シンプルに、それのみです。


今回の書籍は、シン・ドヒョン、ユン・ナル著『世界の古典と賢者の知恵に学ぶ 言葉の力』。この本は2018年冬に韓国で初版、今回米津篤八の翻訳で日本語版が刊行されました。

この本が日本で発売される背景は、実は内容そのものというよりかは、「これを読んでいた人」の存在が大きいんです。ここには書きませんが、気になる方はネットで調べてみてください。著者も「おわりに」にこのことについて触れているので、事実ではあるのだと思います。


タイトルにもあるように、この本は世界の知識人の記した古典的作品から、現代社会にも通ずるような格言を抜き出し、9つの章から構成されています。私自身、「ことば」について研究をしており、哲学にも触れているので、古代の賢人たちがどのように言葉を用いて、人々の心を動かしてきたのか、の概要を掴む、非常に読み応えのあるものでした。

どうしても古典なるものに触れると、言葉尻が固かったり、どこか迷信くさくて、あまり理解ができない、という声もよく聞きます。しかし、この本はとても平易で、理解しやすい言葉で書かれているので、もしそういった悩みを持つ人には読んでもらいたいです。

著者が韓国の人文学者と国語教師ということもあり、東洋的思想が多く感じられました。中国の五経四書や儒学思想、朝鮮の民族宗教、インド仏教的なものが含まれます。勿論、スピノザやバディウ、アルチュセールといった西洋哲学者の箇所もあります。

それぞれの思想は抽象的なもので、それをどう具体化していくかは個々の人間の仕事。西洋哲学は抽象的ではあるけど、それでもなんとなく言いたいことは分かる。対して東洋哲学は読んでもよく分からないから、説明を何度か読み直しました。

自分の読解力の無さと言われればそれまでですが、そうではなくて、東洋哲学はできるだけ言葉を短くした格言、もはや言葉を超えたその先に、人間の学ぶべきものがある気がするのです。

『無門関』という禅の考案を説いたバイブル的著作があり、その中に「 倶胝堅指(ぐていじゅし)」という話があります。ストーリーは長くなるので言いませんが、簡潔にまとめると、 「倶胝和尚は言葉を発することなく、ただ一本の指で教えを説いた」というものです。

我々の用いる「言葉」はあくまで対話ツールであり、本質はもっと奥底にあるような、そんなことを教えてくれる話ですが、東洋思想にはこういったものが多い?気がするのです。

表紙にある「器」。これも人間の良い例えだと思います。「器量」という言葉があるように、どれだけ知識を入れても、その枠を外から支える「自分」ができていないといけませんからね。

「水は方円の器に従う」。荀子の言葉です。

こうした賢人の教えをある程度の数まとめたこの『言葉の力』、オススメです。この自粛期間に、是非読んでみてください。いずれ原文韓国版『말의 내공 사람을 끌어당기는 동서양 고전의 화술』も読んでみたいと思います。

それでは。

今回紹介したもの、amazonリンク貼ってあります。🙂

『世界の古典と賢者の知恵に学ぶ言葉の力 』, かんき出版

『無門関』, 岩波書店





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