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Tech Structureで製品・技術の強みや特徴を把握する ~技術の用途展開・マーケティング~

今回はTech Structureを右から左の流れで考えること、すなわち製品・技術シーズから市場ニーズを考えることについて深掘りしてみます。

Tech Structureについての説明はこちら:
https://note.mu/yugo_chikata/n/n81e835e53811

企業が独自の製品を展開し、新たな市場を構築していく製品開発はプロダクトアウトと呼ばれます。プロダクトアウトで生み出された製品の例としては、ウォークマンやiPhoneなどが挙げられます。これまでに無かった価値が世の中に受け入れられることで、新しい市場が構築されます。

ただ、いきなり製品レベルでのモノを展開し、成功に導くのはかなりハードルが高いと感じるのではないでしょうか。そのような時は、製品に含まれている各構成品や、製品中に活用されている技術に着目してください。製品全体でのプロダクトアウトは難しくとも、個別の構成品や技術であれば、その用途は他の製品や業界に活用することができるかもしれません。

図1

このような考え方は、プロダクトアウトと区別して、テクノロジーアウトやシーズドリブンという呼ばれ方をすることもあります。今回は、ビジネスの拡大に向けて、手持ちの技術をどのような市場に展開していくか、といったシーンを想定してみてください。

技術の用途開拓を考える

例として、「超音波モータ」の用途展開を考えてみましょう。超音波モータとは、コイルや磁石による電磁力ではなく、モータ内の圧電素子の変形を利用して駆動する方式のモータです。モータに電圧を加えるとその中の圧電素子が変形し、回転運動が生み出されます。超音波という名前の由来は、電圧の周波数が超音波領域になることから来ています。

さて、上記の説明で超音波モータが従来のモータとは異なることは何となくお分かりいただけたかもしれませんが、実際にこのモータをどのような場面で活用すればよいのかを考えることはまだ難しいと思います。そこで、超音波モータの保有する機能を抽出してみました。

図2

モータをどこで使うか、といった視点では発想を拡げるのが難しかったかもしれませんが、保有する機能をどこで活かせるか、という視点に変えると、少し考えやすくなったのではないでしょうか。
例えば、「モノを動かす」というモータの基本機能に加えて、「高トルクである」や「軽量である」といった機能が求められるニーズを考えると、「小型ロボットを駆動させる」といった用途が浮かんできました。
Tech Structureで描くと、機能として分解されている情報を収束・統合することになります。

図3

同様に、「静かに動く」「非通電でも位置を保つ」「非磁性に対応する」といった他の機能に着目すると、「医療現場で正確にモノを搬送する」といったニーズが浮かんできました。

図4

このように、Tech Structureを右から左の流れで考えていくと、製品や技術の用途案を見つけることができるようになります。
繰り返しになりますが、その際には、製品や技術が保有する機能を考えることが重要かつ非常に有効です。機能の組み合わせを考えることで、複数の市場ニーズを検討することが可能となります。

製品・技術の強みや特徴を把握する

上記までは製品・技術の具体的な展開先を考えることを中心にお話ししましたが、特に新たな用途の開拓を迫られていない場合でも、製品のTech Structureを作成しておくことは重要です。自社で多数の製品を保有している場合、社内情報の管理や共有が複雑になり、いざという時に有効な組み合わせを考えることが困難になってきます。Tech Structureは社内技術の棚卸にも使えます。

また、Tech Structureの作成を通じて、自社と競合との違いに気付いたり、付加価値を向上させるポイントを見出したりすることもできるのではないでしょうか。このように、Tech Structureには、製品・技術の強みや特徴の再発見といった効果も期待できます。

図5

技術者はどうしても目の前の技術の性能改善や深掘りに集中してしまいがちですが、このような考え方を通じて、自身の取り組みがどのような市場ニーズに対応しているのかを意識するきっかけにもなるでしょう。顧客の声と自社の技術を紐づけるという意味では、営業やマーケティングにも重要な考え方だと思います。

「ドリルを買う人が欲しいのは『穴』である」というマーケティングの格言があります。穴を開けたいと思っている顧客は、ドリル(製品)を探しているのではなく、穴を開ける手段を探しているのです。プロダクトアウト・テクノロジーアウトを狙う場合であっても、それが製品・技術の押しつけにならないように、顧客の課題を明確化しながら、それを解決するために最適な提案は何か、といった視点を持ち続けることは重要です。ニーズ側の情報が明確になってくると、ホームページや製品カタログの魅せ方を工夫することもできると思います。

Co-cSでは、けいはんな学研都市からの委託を受け、多数の研究シーズのTech Structureを作成し、外部発信をサポートした実績があります。また、企業向けにもTech Structureを活用したコンサルティングを行っています。
ご興味をお持ちの方はぜひお問い合わせください。


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