東京2020オリンピック聖火リレートーチのデザインと技術(続き)

今回書くのは、こちらの記事の続きです。

東京2020オリンピック聖火リレートーチの開発が様々な企業の連携により行われたことをご説明しました。

図2

今回はこの聖火リレートーチの中で、新富士バーナー社が携わった「燃焼機構」を深掘りしてみましょう。燃焼機構のTech Structureは下図のように描くことができそうです。

図2

聖火として一般的にイメージされる美しい炎は、拡散燃焼によって生み出される赤い炎です。今回の燃焼機構には、効果的な拡散燃焼を発生できるようにガス経路が設計されています。

加えて、今回の燃焼機構には、豪雨や強風に耐えるための工夫が盛り込まれています。その中でも特にポイントとなっているのが、触媒燃焼という技術が活用されている点でしょう。
800℃以上の高温を必要とする拡散燃焼に対し、触媒燃焼は約200℃でも発生できる燃焼です。今回の燃焼機構には、このような触媒燃焼を発生させるための白金(プラチナ)ドームが組み込まれており、赤い炎(拡散燃焼)が消えそうになっても、燃焼を常に継続させることが可能になっています。

新富士バーナー社のホームページを見ると、風の影響を受けない新しい発光方式のランタンとして、同様な原理を用いた製品を展開していることが分かります。この製品の開発で培った豊富な知見が同社にあったことが今回の課題を解決できた理由と言えそうです。

プロダクトマネージャーと開発担当者の違い

今回は、前回のTech Structureの一部分について、より詳細なTech Structureを作成してみました。

図3

プロダクトマネージャー(今回の例で言うと製品全体の責任者である吉岡さん)の立場で考えれば、各社への要求を明確にし、全体の擦り合わせを的確に行っていくことが重要になります。そのためには、情報を適切な粒度で捉え、全体像を見失わないようにすることが求められます。Tech Structureの中の情報が増え過ぎると、全体像が不明瞭になったり理解が追い付かなくなってしまったりしてしまう可能性があるでしょう。

一方で、製品の構成要素の開発担当者(今回の例で言うと新富士バーナー社)の立場で考えると、自身の担当領域についてのTech Structureを再作成し、より多くの情報をもとに詳細な検討をすることが必要になります。ただし、その際にも、開発の目的はプロダクトマネージャーと共有されていることが重要です。

このように、Tech Structureは単に作成すれば良いというものではなく、活用する目的によって、再作成したり使い分けたりすることが重要です。上手く活用できれば、プロダクトマネージャーおよび開発担当者の両方にとってメリットがあり、効果的な開発プロジェクトを進めることができると思います。

皆さんも、自社の製品開発プロジェクトにTech Structureを導入してみませんか?


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