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【創作】姥捨て山
村からだいぶ離れた山麓に、一郎と祖父母が住んでいた。農業をやって日銭を稼いでいたが、その年は不況で食うに困っていた。
堪らなくなった一郎は、村の仲間に相談しに行く。
すると仲間の一人が、「実は」と始めた。
自分のうちも貧乏で仕方なく、足が悪く世話の要った祖母を山に置いてきたのだという。
一郎はいつか、彼の家から突然ばあさまがいなくなっていたことを思い出した。
一郎は心を決めて家に帰った。
祖父母は飯も炊かずに寝こけていた。祖母の着物のたもとがはだけて萎びた乳の隙間が見えるのが、ひどく汚らしいものに感じた。
彼は、裏庭に止めていたジムニーに鍵を刺す。
ひと月前に、未来からきたというトモキが置いていったものだった。便利なものであるゆえ人に奪われないよう隠していたのだ。
「じいさま、ばあさま。ちょっと散歩にでも行きましょう」
まだ夢見心地な二人を誘い出し、一郎は山道を登って行った。
草木をなぎ倒しながら進む。だいぶ登ったところに開けたところが見えてきて、一郎はそこで車を止めた。そして、後部座席でうつらうつらとしていた祖父母に声をかけ、外に出した。
「こんなところで山菜でも取るのかい?」
祖母があたりを見渡す。白い髪に夕日の色が溶けていた。
「もうすぐ日が暮れてしまう。なんでまたこんな時間に」
祖父はいぶかしげに眉を寄せた。
一郎は下唇の裏を噛んで、二人に背を向ける。
「じいさま、ばあさま。今まで親代わりになってくれたこと、感謝しています。どうか、安らかに」
一郎はそういうと、急いで車のドアを開けた。
エンジンをかけてガラス越しに二人を見ると、呆気にとられたような、悲しいような、いろんなものが綯交ぜになったような表情を浮かべてこちらを見ていた。振り切るように鍵を回した。その時だった。
後部座席に何かの息遣いを感じたような気がして振り返ると、なんと大きな熊が、2メートルもあるような大熊が今にも襲い掛からんと口を開けて一郎を睨んでいた。
一郎は叫び声を上げて車を飛び降りた。
器用に後部座席から抜け出した熊が一郎を追いかける。
一郎は祖父母のことなど忘れ、必死で来た道を下っていった。
いつまで経っても追いかけてくる熊から逃れたとき、すでにあたりは闇に囲まれていた。
重い足を引きずりながら、山を登る元気もなくて立ち止まっていた時、背後から明かりが近づいてきた。
振り返ると、トモキのあのジムニーであった。
***
30分、1008文字。
途中で終わってしまった。
一郎のほうがおいていかれるストーリーでした。
じいさんばあさんはジムニーで帰ります。
今日はいい加減にストーリーを考えたせいか文字数を稼げた。
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