カッコウの鳴く朝 : 「初夏を聴く」
「初夏を聴く」
まるで霧の立ち込めたような、雲の中にいるような朝だ。
ビルばかりで、木立もない街なのに、どこからかカッコウの声がする。
「カッコウの鳴く朝、
それは始まりを告げる。」
始まりとは何だろう?
カッコウの鳴く朝…とは、
もっとワクワクすると思っていたのに、
この雲の中の朝のように、
漠然として何も分からない。
カッコウの姿を探しても
それはどこにも見当たらない。
見えるのは雲に沈んだ
コンクリートのビル。
カッコウがこの街にいるとさえ思えない。
それなのに、
すんだ声でカッコウは鳴いている。
カッコウが始まりを告げる朝…?
「始まりはいつも暗いんだよ。」
と、ネバーエンディングストーリーの一節を思い出す。
そうか。
「小さな光がやがて大きくなって、世界を照らし出す。」
そう続いたはずだ。
これから、
新しい世界が見え始めるんだ。
始まりはいつも暗いから、
不安にならずにただ光を見つめていればいいんだ。
そしたら、世界は光に包まれて、
新しい世界が広がって行くんだから。
カッコウの声を聞きながら、
これから、
私が見たい世界を想像してみる。
今日は、
カッコウが始まりを告げる朝だ。
昨日までとは、
さよなら。
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