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「くだらないけど、くだらない私の事を聞いてください。」


高校生になるまで、この世に人間と言うものがいる事に、気付いていませんでした。

それまで、この世界は、私の妄想の世界でした。
まだその時は、デジタルと言うものがありませんでしたが、デジタルで人間や動物、景色、全てのものが現れている感じです。

高校生になったある日。
友達がポニーテールにして登校しました。
何故か?
ポニーテールにしたうなじを見たとき、
「この人! 人間なんだ!!」
と、気付きました。
それと共に、激しい吐き気に見舞われ、立っている事が出来ませんでした。

それまでは、
勉強さえ遊びの世界で、数学の数字の美しさに感動したり、絵を見ても、規則性の美しさに感動したり、本を読んでも、言葉の美しさに感動したり、全てが妄想の遊びの世界だったのです。

妹や弟は、お人形…でした。
だから、私がお世話しなければ…。
ご飯を作ったり、洗濯したり、お掃除したり。日常さえ、妄想の遊びの世界です。私がお世話しないと、お人形達が悲しい顔をします。悲しませてはイケない。

今思えば、
これは、ネグレクトだったせいかも知れません。
抱きしめられる事なく、母乳を与えられることもありませんでした。
気にくわなければ殴られる。

子供って、親に抱きしめられて育つけれど、寝かせられたままで、抱きしめられる皮膚感覚がないから、知識だけのデジタルな世界が出来上がったのかな?…と、自分では分析しています。

でも、本能で姉弟は守らなくてはと、感じたんでしょうね。感覚としてはデジタルでも。

自分の事なのですが、人間の生き抜く本能は凄いなと思います。
命を脅かす辛い事があっても、妄想の世界を作り上げれば、世界は感動に溢れていて、生きて行けるのですから。

幸せな妄想の世界で暮らせたのは、私が読書が好きだった事にあると思います。町の図書館、学校の図書館。本は沢山あって、私に沢山のヒントをくれました。今は、お金を払って本が買えるので、もっと読みたい本を読むことができます。

でも、高校生になれば、妄想の世界と、現実の歪みが埋められなくなったんでしょうね。きっと、友達のポニーテールは、タダのトリガーです。

そんなトリガー、ある?
と、思うんですが。

妄想の世界からの切り離しが起こると、もう、どう生きていけばイイのか、分からなくなりました。

あんなに美しかった数式も、全く理解出来ないし、絵の具の配列も分かりません。友達?とも、人間だと気付いたら、何を話せばいいのか分からなくなりました。
登校の沢山の人並みが、人間の集団だと気付くと、その波に乗ることが出来なくなりました。
だから学校へは、毎日遅刻するか、無断欠席。
もちろん、そんな変化に誰も気付く事はありませんでした。

あ、一人だけ…いました。

3年間私の担任だったタセ先生。
「どうしたんだ?」
と、声をかけてくれたのですが、その当時、妄想世界との切り離しが、起こったなんて、自分でも分からないから、答えようがありませんでした。

でも、
タセ先生は私のマバラな不登校を見守ってくれたので、私は、高校を卒業出来たのです。
だから、本当に感謝しています。

問題を大きくして騒ぎまくったり、親を呼び出して問い詰めたりされたら、私は、高校を中退していたでしょう。

私の時代は、学校に行かない子を不良とラベル付けしました。

世間的なラベル付けは、その人が納得する為のものです。当人を本当に理解する上では全く無意味。

そんな事をしないタセ先生は、本当は出来る大人だと思うのですが、その当時の私は、それさえ分かりませんでした。

でも、卒業前、
体育を全く出席していなかった私に、
「出席してないんだから、学校10周して来い。」
と、タセ先生は言いました。
それで、欠席はチャラ。
一人で走らされてるよ〜。と、冷ややかに見る人もいましたが、私は、先生の「ちゃんと見てたんだぞ。」と言う気持ちが伝わって、何となく笑顔でした。
走り終わるのを待っていた先生は、
「これからはチャントやれ」とか、余計なことは言わず、笑顔で、
「終わったか。」
と、言いました。私も笑顔で、
「ハイ。」
とだけ言いました。
余計なことを言われても、現実に馴染んでいない私には、ただ混乱するだけだったでしょう。

それからも、現実世界との格闘は続き、それでも、未だ認識出来ていない事がありました。

コノ世のには、良心を持たない人が存在すると言うことです。

それを知ったのは、夫と結婚したことからです。

夫が私と結婚した目的は、私の貯金と、自分の子供の世話をさせるためでした。

夫の金融機関に貯金していたので、貯金残高を知っていました。息子を進学させるのにお金が必要でしたし、息子の世話を両親が年老いて出来なくなったのです。

結婚して家に入ると、まず言われたのが、
「息子に結婚したって言うな。でも、世話はさせてやるから。」でした。
もう、頭のナカはパニックです。

一緒にディズニーランド行ったりしたいって、言ってたよね?

「それから、息子と話しは一切するな。大体、話しする必要ないよね? 他人が話しかけてきたら困るでしょ?」

他人て? 戸籍上、親子なのに他人て、どういう事?
全く理解できません。

奇妙な結婚という共同生活が始まりました。

息子の世話をしてほしいから、仕事は、辞めてほしい。そう言うので専業主婦になりました。夫の元には、私を扶養者に入れ、毎月12000円が入ります。
しかし、夫は貯金通帳を私によこし、これで生活してと、言ったのですが、通帳の中身は空っぽで、振り込まれる給料は、全て下ろされていました。

夫に交渉しても、
「俺は通帳を渡している。やりくり出来ないのか?」
と、ラチがあきません。結局、自分の貯金で生活費を払うしかありませんでした。

貯金だって、簡単に減っていきます。もう貯金がないと言うと、
「働けばいいだろう?お金がなければ働け。」
と。
しかも、
「家事と仕事は、大変だし、扶養手当をもらった方が得なんだよ。」
と言って、パート以外は拒否です。
考えればわかります。
扶養手当が自分の口座に入るのは守りたいのです。

「扶養手当をもらって得するのは誰なの? 私は、生活費ももらってない。扶養してないのに手当だけ自分のもの?」
そう言うと、一切返事をしなくなります。

返事しようがしまいが、夫に不利益はないのです。無視する事が夫には得策なのです。

返事しなくても、明日の食事を私は作る…そう、夫は知っているのです。
私は努力すれば、家族になれると考えていることを、夫は知っているのです。

結局、息子が大学に進学し、息子の世話も、必要なくなり、私の貯金も使い果たすと、夫の暴力はエスカレートしました。
首を締めて殺されそうにもなり、それでも、解決策を私は探していました。
歩けないほど、殴られ、蹴られ、仕事に行けなくなって、
「もうやめよう」
と、別居しました。
夫は、私を出て行かせることが目的だと、ようやく分かったのです。

それでも、離婚はしてくれません。
家を建てたとき、私が連帯保証人になったのと、土地を私が購入したからです。
何かあったときは、私に返済させたいし、土地の代金も払いたくない。

離婚したいと言うと、
「土地の金返せって、言うんでしょ!」
と、言うのです。

家庭裁判所にも行きました。
戸籍上夫婦になれば、どんな生活をしても問題ないそうです。

夫も法律も、理不尽でしかありません。

そんな人間が存在する。

驚愕の事実です。

しかし!

そのお陰で、私は、ネグレクトで育ったことに気付きました。
自分の意志で生きていたつもりが、実は違ったんです。

心の中の世界と、現実は全く一致していませんでした。大人になっても、長い時間をかけても、気付くことが出来なかった。

無意識に、全く自分の意志の外で、相手の欲求に沿って行動してしう事に気付けませんでした。

夫は、確実に私の行動条件を見抜いて近づいていました。

悔しいけど、DVの夫に出会わなければ、私は、気付くことが出来なかったのです。

物事には、一つの側面ではなく、隠れた側面があります。
起こる何かは、どんなに辛くても、何かを知るチャンスなのだと、私は、思います。

なので今は、
ハプニングはチャンス!
が、私の口癖です。


もちろん、簡単に色んな事をクリアしたわけではありません。

高校の時は、タセ先生が現れたように、その度、色んな友達に手を引いて助けられました。
なので、辛かったことよりも、
助けてくれた方達に感謝の方が
大きいのです。

もう、
みんなに百万回のキスを贈りたい。


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