不器用な子ども、発達性協調運動症の子どもは自己肯定感が低い!?

こんにちは。作業療法士のユウエイです。

普段は作業療法士として発達障がいの子どもの療育・支援に携わっています。

オンラインサロンの
こども発達支援カフェ“わむすび(WAMUSUBI)”を運営しています。
月額599円で、発達障がいの子どもの発達支援や療育、子育て支援をしていくサロンとなっています。また、子育てで悩んでいる親御さんにとって同じ子育ての悩みや子どもさんの困り感を共有できる場となればと思います。

コンセプトは

支援の輪(わ)を結(むす)ぶで、子どもの支援の輪を広げるという意味で
“わむすび(WAMUSUBI)”

興味のある方は、覗いてみてください。


今回は
発達障がいの子どもの支援をテーマに

不器用な子どもの支援
発達性協調運動症の子どもの支援について、自己肯定感が低い!?

という話をしていきたいと思います。

このnoteを読んでくださっている方は発達障がいについて興味や関心のある方であると思います。

あまり聞きなれない言葉かもしれませんが

発達性協調性運動症、あるいは発達性協調運動障害という言葉を聞いたことはありますか?


英語でいうと

“Developmental Coordination Disorder(DCD)”

と表記されます。

いわゆる
不器用な子ども(大人)を指します

この発達性協調運動症の子どもさんは、不器用というだけあって
身体の動かし方や指先の不器用さなどから、運動面での不器用さが目立つ子どもさんです。

見落とされがちなのが、他人と協調して動くことも苦手な場面があったりします。


発達性協調運動症の診断のついている有名な方がいらっしゃるのですが、、

映画“ハリー・ポッター”で有名な主人公の
ダニエル・ラドクリフさん


彼は発達性協調運動症の診断のされている方です。

具体的に話すと、彼は7歳くらいの時に
失行(dyspraxia)ディスプラクシアと診断されたそうです。

ラドクリフさんの言葉をそのまま借りて説明すると
「読字症(dyslexia)ディスレクシアみたいなものだが、[読字ではなくて]動きの協調に問題がある。検査をすると、言語の問題はなかったが、運動技能が平均以下だった。」
現在でも失行のためにフラストレーションがたまることがある。いまだに上手に自転車に乗ったり、泳いだりすることができない。普通の靴だとうまく結べないので、紐の結びやすい靴を履いている。
 

このように本人談として記されていたりします。

本人の言葉にあるように、うまくできないためにフラストレーションがたまったり、靴紐がうまく結べなかったりと、日常生活を送るうえで生きづらさを抱えていることがわかります。

発達性協調運動症の当事者で大人の方が経験しているライフヒストリーとして語られている内容を少しご紹介したいと思います。

その方の経験が下記になります。

幼稚園に入園して、色々な経験をすることになるが、不器用さはすでに私の心を苦しめていた。みんなでお遊戯をするが、その動きについていけない。特に先生が自分の正面でする手足の動きを真似ようとしても、左右が反対になったり、思うように身体が動かない。うまくいかなくてイライラしたものである。

箸の扱い方が下手なため、お弁当を食べる事に時間がかかり、いつも掃除が始まるまでや、母が迎えに来る頃まで終わらなかった。あまりに終わらないため、教室を追い出され、職員室で食べることがあり、それもイヤなことであった。

 体育の時間は苦痛で仕方がなかった。運動会のかけっこで遅くても、誰にも迷惑はかけない。しかし、リレーとなると話は別だ。チームプレーなので、一人遅いのが混じると、みんなに迷惑がかかる。そこでまた、自分が自分でイヤになった。

協調運動は他の科目でも必要とされ、苦労した様子をこう語る。

 困ったのは体育だけではない。図工という科目や音楽という科目も私の天敵だった。

 そして音楽の時間は、特に楽器を扱う事に困難があって、リコーダーなどは本当に困った。

 これも個人プレーの間はまだいい。グループ活動で、グループの成績で評価される時間は地獄だった。(中略)同級生は私をしごいた。半ば、いじめに近いしごきで、本当に辛かった。必死の思いで練習したのを覚えている。二度とあんな思いはしたくないと大人になってからでも思ってしまう。

 他に困った事として、家庭科が挙げられる。特に裁縫や料理の課題は困難が多かった。

 調理実習の時間も困難があった。きゅうりを輪切りにするのが課題だったが、あまりに手元がおぼつかないので、途中で先生に「もうやめて!!」と怖がってストップをかけられた。もちろん評価は最低だった。何をやってもうまくいかなかった。

発達性協調運動障害[DCD]不器用さのある子どもの理解と支援
[監修]辻井正次・宮原資英
[編著]澤江幸則・増田貴人・七木田 敦

上記にあるように、当事者の方からの体験、経験、人生の中で見てきたもの感じてきたものを聞くと

幼稚園や保育園・学校という生活の中で、さまざまな教科や課題がある中で、個人の問題として苦労するだけでなく、グループ課題となると他のメンバーに迷惑がかかるという経験があると思います。そのときはメンバーへの気遣いに青息吐息の思いを様子がうかがえます。こうした状況を打開するには、教員がグループ課題を評価する基準を転換しなければならないという風にも考えられます。グループ課題の達成メン度だけを評価するのではなく、メンバー間で助け合い、協力する様子や、各メンバーの長所や弱点をいかにみんなで補うかという基準があってもいいのではないだろうか。

このようにも同様の書籍を通じて伝えられています。

不器用な子どもたち、発達性協調運動症の子どもたちは当事者の体験談からもわかるように、個人の協調運動の苦労や苦痛だけでなく、幼稚園や保育園、学校生活の中で行われる社会的な集団活動の中でも苦労や苦痛を伴った経験をしているということです。集団活動の場面での同じチームやメンバーと一緒に協調運動が関連する課題を行なうことで、他者へ迷惑をかけたり、あるいは他者へ迷惑をかけるかもしれないという気遣いや心配・不安が当事者の方への心理的負荷になったり、集団活動の中の課題をうまくできないことが自尊心を傷つけて、自信や自己肯定感が育まれにくくなって、自己肯定感が低い子どもの状態として、療育の現場で見ることがあるというのが発達性協調運動症の子どもたちが置かれている現状になります。

これらの問題に加えて、療育の現場での経験を踏まえながら不器用な子どもさんの置かれている状況を整理すると
自閉スペクトラム症の子どもさんや、ADHD(注意欠如多動症)の子どもさんにも同様に、この不器用さが織り交ざって症状や特性として表れているケースもあるんですね。

自閉スぺクラム症の約9割
ADHD(注意欠如多動症)の約6~7割


に、この発達性協調運動症の子どもさんに見られるような

協調運問題が併存している

と言われています。

また、このような特性を持っている子どもさんのご相談でいただくのが
こだわりに対する面や対人交流のような、社会的な問題に関連すること
あるいは、落ち着きがなかったり、注意が散漫になりやすいこと、学校生活における学習面(算数が解けないことや、漢字やひらがな・カタカナがうまく書けないこと)などの内容が多くあります。

このようなご相談の内容に比べると、不器用な子どもさんの苦手な課題である“協調運動に関連する課題”のご相談が少ない印象を受けます。

つまり、何が言いたいかというと

不器用な子どもの生活課題は見逃されやすい!

ということです。

もちろん、療育の現場でご相談いただく子どもたちの生活課題として
“なわとびができない”、“体幹が弱い・バランスが悪い”、“転びやすい”などの運動面に関連するご相談もいただくのですが、上記に書いたように自閉スペクトラム症の子どもさんやADHDの子どもさんの苦手な生活課題としてご相談いただいたりする内容の学習面の課題や対人関係の関連する課題と比較すると少なく感じます。

そのため、“協調運動の課題”は見過ごされやすい・見逃されやすいという風に思います。

療育を行なう立場の方や、支援者側の立場の方が子どもの困り感の背景に“協調運動の問題”があることに気付くだけでも、大きな支援への結び付きに繋がると思いますので、不器用な子どもさんをお見掛けしたら、

協調運動の問題があるかも?

と考えながら関わることで子どもの支援が手厚いものになっていくのではないかと思っています。

今回の記事は以上です。

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