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こんなラブコメってあり?

 二年生の始業式、満員電車の車内で俺は岐路に立たされていた。
 同じ制服の女の子が涙目でこちらを見つめてくる。思わずドキリとしてしまったがそれどころではない。彼女のスカートに見知らぬ男の手が触れている。間違いなく痴漢だ。

 女の子は視線で俺に「助けて」と訴えかけていた。というか、かなり小さい声で「助けて」と言っている。なんで俺なのか疑問に思ったが無視するわけにはいかない。

 俺以外にも数人の乗客が彼女のSOSに気付いており、視線で俺に「早く助けてやれよ」とプレッシャーをかけてくる。他力本願のくせに急かすな。と、ふいに女の子の方から声が聞こえた。

「……助けて」

 わかった。助けるからちょっとだけ待って。

「さっさと助けてやれよ。同じ学校なんだろ」

 チャラい格好の男が小声で言ってきた。てめぇ後で覚えとけよ。もうあれこれ考えても仕方がない。まずは男の手を取らないと。

「おい! てめぇ何してんだ!」

 俺は男の手首を掴んでそう叫んだ。男は驚いた顔で周囲に視線を巡らせる。

「な、なんだ君は」
「この……」

 一瞬、「この子」と言いかけてやめた。変に注目されるのは彼女の本望ではないだろう。だが何て言えばいいのか。

「なんなんだ! 急に掴んできたと思ったら黙り込みやがって。迷惑だ離せ!」

 やべっ、反撃してきやがった。しかも何気に力強ぇ。
 男が俺の手を振り払ったその矢先、電車が駅に到着した。車内が少し傾いてバランスを崩した男の足を、女の子が思いきり踏みつけた。

「痛っ!」

 男は尻餅をつき、ほかの乗客に次々とぶつかる。車内に険悪なムードが流れる。
 ドアが開いたところで男はそそくさとホームに降りて逃げていった。誰も追うことはせず再びドアが閉まる。

「あ、ありがとうございます」
「いや俺はなんもしてないよ。怪我とかしてない?」
「はい。大丈夫です」

 彼女はそう言って小さく会釈した。なんだかんだ人助けも悪くないな。

「……ど、どう?」

 幼なじみの双葉はノートパソコンの画面から目を離すと、椅子にもたれかかり、僕の目を見据えて言った。

「とりあえず……投稿してみたら?」
 
 

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