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何も分からないところから始めても

前職時代は「やったことないこと」ばかりやらないといけない状況でした。
創業メンバーの誰一人、社員として会社で働いた経験がなかったので、仕事の進め方とか基礎的なことを何も知らなかったのです。

これは本当の話ですが、初めてお仕事を頂いた時に発注先の会社さんから「請求書下さい」と言われて、その時初めて請求書というものの存在や必要性を知ったぐらいです。(そんなの社会人経験なくても知ってて当たり前、一般常識だろうと思うかもしれません。言葉の意味は勿論知ってたんですが、でも、本当によく分かってなかったのです。)
請求書をどうやって作ったらいいか分からなかったし、何か決まり事やフォーマットがあるのか、そういうことも分からなくて、とりあえず文房具屋に「請求書」を探しに行ったぐらい。それぐらいビジネスのことや商売のことに無知でした。

どんな仕事も大体は初めての仕事で、ゼロからサービスの仕様を考えたり見積もりのフォーマットを考えないといけませんでした。当時は検索エンジンを運営していて、サイトの広告を掲載してもらってたのですが、この広告一つとっても、そもそもバナーサイズのレギュレーションなんてなかったし、全部自分たちで作らないといけませんでした。

(ちなみに、ウェブ広告の事例として、芸能人がバナーに初めて使われたのは、僕らが運営していた検索エンジンに掲載されたものが最初の例です。ネット広告のレギュレーションも未整備の状態だったので、TVCMなどで契約しているタレントをネット広告に使えるかどうか、その辺の権利関係もまだ議論中でした。そんな中、ある企業とある広告代理店が、トライしてくれたことで、初めて芸能人がバナーに掲載されたのです。そのバナーのクリック率は凄まじく、広告からのトラフィックで先方のサイトが落ちるぐらいに反応が良かったんですね。まだネットに芸能人の写真が使われることが珍しい時代だったからですね)

サイト構築の仕事は、雑誌づくりのプロセスや、建築のプロジェクトとか、似たようなプロジェクト型の仕事の進め方を勉強をして少しづつやり方やプロセスを整えていきました。サイト構築という仕事がそもそも世の中に存在しなかったので自分達で考えて作っていく必要がありました。同時期にホームページ製作とかサイト構築を手掛ける会社も沢山登場してきて、広告会社や印刷会社も参入してきたりで、少しづつ「業界」みたいなものが出来てきて、色んな情報が世に出てくるようになりましたが、最初は本当に何もわからない中、手探りでサービスを作りあげないといけない状況でした。
見積もりも「ページ単位」なのか「人月人日」なのか、見積もり項目にはどんな項目が必要なのか、プロジェクトをやるごとには試して、こうしたほうがいい、ああした方がいいと、少しづつブラッシュアップしていきました。

契約書が欲しいと言われても、今ならネットで検索すれば色んなサンプルが手に入るでしょうし、自分で作るのもそこまで苦労しないとは思いますが、当時はそんものはなく、また外部の専門家にお願いできるような余裕もなく、自分で作るしかありませんでした。とりあえず契約書の作り方を学べそうな本を買ってきて、見よう見真似で作りました。

マニュアル作成の仕事を頂いた時は、その足で本屋に直行してWordのハウトゥ本を何冊も買ってそれを読んで使い方を一通り覚えるところから始めました。マニュアルの中身の執筆はなんとかなりそうな気はしてましたが、それを表現するのに、Wordをちゃんとマスターしておかないと、そっちに時間が取られそうな気がしてたからです。

何もかも素人だったので、何もかも勉強しながら取り組まざるを得ませんでした。

20代でのこういう経験はその後、僕の仕事に対してのある部分の自信に繋がってます。かなりのことはやろうと思えばできるし、勉強しながらでもやれなくはない、という自信です。

会社で何か新しい取り組みをする時に、「経験者がいない」「誰もやったことがない」ということが「出来ない理由」「難しい理由」として挙げられることがありますが、僕としては「そんなの当たり前やん」と思うんですね。そりゃ資格が必要とか、免許が必要とかね、そういう専門的な仕事は難しいとは思います。
でも、そうじゃない仕事はなんとでもなるし、なんとか出来る力を養ったほうがいいんじゃないかなと思うんです。

木村石鹸では新人にいきなり「商品作って」とか「移動販売車作って」みたいな無茶振りをしてすることがあります。これは、大抵の人はやろうと思えば、知らないことだろうがやったことないことだろうが出来る、と思ってるからお願いしてることです。試練を与えようとか、嫌がらせをしようということでもなく、「何も分からない」ところから、何かを始めて、やり遂げるということが出来たら、それは「自信」に繋がるんじゃないかと思ってるんです。

あまりにも何もわからなさすぎて、何がわからないかもわからない。それは流石にキツイって声もあります。でも、僕としてはそういう辛さも経験しながら、何にも分からないところからでも何かやり遂げられるって経験を積んだ方が良いんじゃないかと思ってます。若いうちの方がそういう仕事をするのには良いんじゃないかと。

周りが過保護になって気を遣い過ぎても良くないと思うんです。どう進めたらいいか分からない、何から手をつけたらいいか分からない、なんて状況は、むしろすごく有難いことです。そんなところから考えて仕事を組み立てていくことなんて、普通に仕事してたら滅多に経験できません。なにも「分からない」ところから仕事をやっていけるようになったら、どんな仕事でもなんとかなるって自信も持てるようになるんじゃないかと思うし、その自信はどこへ行っても役立つのではないかなと思うんですね。

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