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クラファンの振り返りと、クラファンについて考えることのあれこれ

オールユアーズ木村さんと、ワンノバの高山さんのトークイベントが急遽開催されるということで、出張中でタイミング合ったので行ってきました。

最近僕もすっかりオールユアーズの服にハマってて、この出張中もモフと、着たくないのに着てしまう、通称「着た着て」のパンツ、ハイキックジーンズを着まわしてました。

ワンノバも最近、パンツを5着買ったばかりで、めちゃくちゃ愛用してます。本当は追加であと5着ぐらい欲しいのですが、今は色がグレーしか残ってなくて我慢してます。

ワンノバは、今ちょうどKickstarterでクラファン真っ最中。旅行に照準を当てた新しいパンツを売り出そうとしてて、僕も支援したばかりです。

オールユアーズさんのことは、実はオールユアーズさんがクラファンしてた時にはあまり知らなくて、後から知人からこんなブランドがあるんだよ、クラファン24ヶ月連続やってて面白い仕掛けしてるよ、と教えてもらいました。

その後、オールユアーズさんの主催するLIFE SPECというイベントに木村石鹸として参加させて頂き、オールユアーズ代表の木村さんともトークイベントやらせて頂いたりして、どんどん知るようになり、同時に商品も買うようになり、一つ買うとハマってしまってなんだかんだと、今、オールユアーズさんのアイテムは7アイテム家にあります。

さて、そんな木村さんと高山さんのトークイベントのテーマはずばりクラファン。

オールユアーズさんの「着た着て」は、国内のアパレル系クラファンでの支援額では未だ一番お金が集まったプロジェクトだそうです。ある意味、オールユアーズさんは、クラファンを知り尽くしたプロ。
ワンノバはそんなオールユアーズさんに触発されて、クラファンにチャレンジし、今、オールユアーズさんもまだ挑戦していない世界相手のクラファンにチャレンジしてるニューカマーといったところでしょうか。

この2人がクラファンについて話するんだから面白くないわけがない。で、実際、めちゃ面白かったんです。無料でいいのと思うぐらいに。

国内アパレルクラファン最高額の秘密

オールユアーズの24ヶ月連続クラファンスタートの1回目はこれです。

これは実は思ってたより支援が集まらなかったそうです。もっと行くと思ってたと、木村さん。

このクラファンの反省を踏まえて、次からやり方を変えたそうで、大成功したのがこれ。

国内のアパレル分野の調達額としては、未だトップ。破られてない記録。

さて、最初と2回目のクラファン。何を変えたか?

①サムネイルで説明しすぎない

最初のやつは、サムネイルに全部説明を書いてて、プロジェクトページ本文見なくても内容がだいたい分かってしまう。

この第二弾は、「着たくないのに、毎日着てしまう」というメッセージだけにして、中身を見ないとよく分からないようにした。

これによってプロジェクトページをしっかり読んでくれる人が増えたそうです。

確かに。中途半端にサムネイルだけで分かってしまっと、もっと伝えたい中身や想いとかまでは読んでくれなくなりますね。これは結構重要だなぁと思いました。

②クラファン開始前にクラファンプロジェクトページを公開

今はそういうやり方は普通になってるけど、当時は、クラファン開始前にクラファンのプロジェクトページを公開するケースは殆どなかったそうです。

見せても購入できないので、取り逃しがあるから勿体ないという発想があったからでしょうか。あるいはオープンのタイミングがニュースバリュー的に一番高く、プレスなど配信するにも好都合だからでしょうか。

しかし、第二弾では、公開前にプロジェクトページを、自分たちのことを知ってくれてる人たちに公開して、内容を知ってもらい、期待感を持ってもらうようにしたそうです。

今でこそオールユアーズさんはかなり知名度もあるし、一定数のファンを持ってられますが、このクラファンやってた当時はまだまだそこまで知られてる存在ではなかったと。

そもそも自分たちのことを知ってくれてる人は少ないし、クラファン開始だからって、今自分たちがリーチしてない人たちが直ぐ反応してくれるわけではない。これだけ毎日多くのプレスが配信されてるし、自分たちのプレスが取り上げられるわけでもない。

であれば、まず、先に知ってくれてる人に教えて、その人から拡散してもらえるようにした方がリーチは広がるんではないか。

そんな風に考え、自分たちのことを知ってくれてる人にプロジェクトページを教えて見てもらうようにしたそうです。

すると、ページ見た人がこの商品を気に入ったり、面白いと思ってくれてSNSでシェアしてくれたり。クラファン開始前から話題になっていった。

木村さんは、「(自分たちを)知ってる人が騒げる状態をつくる」というような言葉で説明されてました。

今はこの手法はかなり使われて一般的になってるとのことですが、僕は全然意識してませんでした。言われてみると確かに。

そして、僕ら自身が今回挑戦したクラファンについても、意図してではなかったですが、結果的には②のノウハウを使った状態だったんだなぁということに気づかされました。

ここからは、今回の僕らのクラファンのケースで考えていきます。

クラファン開始前/木村石鹸の場合

僕らもちょうどそのイベント日、初挑戦したクラファン(Makuake)が終了した日でした。自分たちでやってみて、これはすごく面白い仕組みだなぁと改めて思ってたところでした。

僕らは今回意図したわけではなかったんですが、結果的には、クラファン開始前に、この商品のことを知ってくれてる人が一定数いるという状況が出来ていました。

オールユアーズさんの②の状態を、クラファン開始の半年以上前からやってたような感じだったんです。

このシャンプーの中身が出来たのは2018年10月で、その頃から僕はこのシャンプー(当時は「すごいシャンプー」と呼んでた)がいかに凄いかfacebookに投稿してたんですね。

また、会社のブログでも「すごいシャンプー」の商品開発に関しての話を何回かに分けて投稿していました。

2019年3月には、170人にサンプルを配ってアンケートにも答えて貰ってます。この170人はSNSとブログで告知しただけだったんですが、直ぐに定員いっぱいになってて、シャンプーというカテゴリーの需要の強さというか、良いものに対しての希求感の強さを感じました。

実際使った人たちの中には、この商品をかなり気に入ってくれた人もいて、熱烈に発売を待ち望んでくれたりしてました。

2019年夏には商品発売しようと計画してたんですが、製造上の色んな問題に直面して、延びに延びていったんですね。

そんな中で、途中でクラファンを使ってみることが持ち上がりました。

最初から意図してたわけでなく、これ以上、発売が遅くなって、何もしてない状態は、せっかくサンプル使ってくれて熱烈に商品化を待ってくれてる人たちにも失礼じゃないか、もうさすがに忘れられてしまうんじゃないかという危機感があったわけです。とにかく予約という形でも商品を世に出したほうがいいんじゃないかなと。
その時に、クラファンのような仕組みを使う方が盛り上がるんじゃないかぐらいの気持ちでチャレンジしてみることにしたわけです。

この期間が、ある意味、この商品への関心を高めるための助走期間的な役割にもなってたのだと思います。自分がSNSやブログで繋がる狭い範囲の中でのことではあるけど、この辺の活動は、今回のクラファンの初動に大きく影響したという実感はあります。

開始前にfacebookのクローズドグループを作った

クラファン開始日の前々日ぐらいに急遽、このクラファン用のfacebookのクローズグループを立ち上げました。

結果的には、これもやってよかったなと思ってます。facebookグループの多くの方が初日クラファン開始直後に支援してくれたからです。

この施策は、Makuakeさんからの提案だったんですが、僕自身は最後の最後まで乗り気ではありませんでした。できればやりたくなかったんです。

このグループに招待するのも凄く嫌で、招待された方も嫌な気分になるんじゃないかと思ったんですね。クラファンやるから無理やり応援しろと強要してるみたいで。

Makuakeさんからは、繋がってる人全てを一括して招待したらいいんじゃないかと提案されたんですが、それは流石にやりたくない。とりあえず、自分が過去にこのシャンプーに関して投稿したものを対象として、コメントくれた、いいねくれた人だけを個別に招待することにしました。

めちゃくちゃ面倒くさかったんですけど、一つ一つ調べてね。スパムみたいに皆に一斉にやるのは忍びなかったんです。自分に理由をつけときたかったんですね。

招待したのは350人ぐらいだと思います。

予想に反して、多くの人がグループに招待されたことを喜んでくれたんですね。しかも、かなりの人がすぐにグループに入ってくれた。多分、クラファン開始前日には300人近くにはなってたと思います。

このグループにのみ、いつからクラファン開始するか時間まで告知して、早い者勝ちのリターン品があるんで、クラファン開始したら直ぐ買って欲しいというお願いをしました。

どこのクラファンでも大体同じだと思いますが、クラファンが成功するかどうかは初日にかなり掛かってます。初日が全体の金額の30-40%ぐらいになるケースが多いらしいです。なので、初日にある程度支援額はいって欲しいんですね。

なので、まず、facebookグループの人たちの中の数人が飛びついてくれたら、それが呼水になって、知らない人にも多少は広がってくれたらいいなと、そんな思惑があったわけです。

とはいっても実際購入してくれる人は?

僕の中では、人がモノを買うというのは、実はかなりハードルが高いことだという認識があります。

確かにこの商品には熱烈なファンはいる。けど、実際に購入となると、そこまでいかない人も多いんじゃないかと見てました。そんな簡単には買ってくれないだろうと。

例えば、サンプル利用者で高評価をつけてくれたのは80%ぐらいいました。
170人×80%=136人。

でも、この中で、実際に購入してくれるのは、せいぜい5%ぐらいなのかなというのが、僕の感覚でした。

つまり、170人のサンプル利用者中、購入してくれるのは実際は、6-7人ぐらいかなという感覚です。えらく消極的と見られそうですが、ECサイトの運営は前職でもかなりやってて、買うというところの敷居はかなり高いんだ、というのが感覚としてはかなり強烈にありました。

どれだけ「いいね」が多くても、どれだけ「欲しい」ってコメントが殺到してても、実際に商品を買う人は少ない、と僕は思ってたんです。

こんな読みだったんで、裏目標100万にはしてましたが、表目標30万も実は結構苦労するかもなぁというのが、始める前に考えていたことでした。

リターン品は色々設計はしましたが、一番売れるのは一番安いセットになるだろうと。なので、早割引きなども考慮して支援平均単価は5,000円ぐらい。30万円行くためには、最低60人は買わないとダメなわけです。って考えると、なかなかのものじゃないかと。

予想を遥かに超えた初日

ところが初日開始2時間で100万超えてしまったんですね。これは本当にビックリしました。

正確にはわからないですが、facebookグループに入っていたかなりの人が、そして、サンプル利用して高い評価をくれた多くの人が、初日開始直後に買ってくれたんです。こんなことは普通のECではあり得ないことじゃないかと思います。驚愕でした。

初日は支援してくれた人のほぼ半数が応援コメントもくれて、これもに信じられないことでした。ECなんかでは色んな特典でオファーしてもなかなかレビューを書いてもらえないのに、皆、わざわざコメントを残していってくれる。めちゃくちゃ嬉しかったです。

今までネットで物を売るみたいなことを色々してきました。素敵なレビューや応援を貰ったこともあります。テレビとかで取り上げられて一時的にバカ売れした経験もあります。そういうお祭り騒的なものは経験してるんですが、今回のこのクラファンの初日の盛り上がり方とか、皆さんからの応援とか、そういうものは、明らかに今までのそれとは違う感動がありました。

初日にスタートダッシュを切れたというのは、現象としては、先の②の状況をうまく作れてたから、ということがあるんですが、もちろんそれだけでは説明つかないようなレベルの事象がここにはあるなぁと思うんですね。マーケティングのよくあるパターンというか、紋切り型のファネルモデルとは全然違う何かがあるなぁと。

さて、クラファンとは何なのか?どう活用すべきか?

クラファンについては自身としては仕組みも理解してたし、何度も支援したこともあるし、十分理解してるつもりではありました。

が、でもこういうものって、実際の実行者側に立つのと、ただ一ユーザーとでは、やっぱり見えるものも感じるものも随分違うなぁと思いました。

それはこちらにも書いたことです。

これは、応援とか共感を可視化してくれるサービスであり、また、商品のリリースや立ち上げをある種のお祭りにして、支援者を巻き込んで商品の開発やリリースに一体感を形成していく仕掛けだなぁと感じました。

前段で紹介したイベントで、今Kickstarterに挑戦中のワンノバの高山さんは、日本のクラファンはどちらかというと『想い』とかが大事で、そういう『想い』に支援者がつくが、kickstarterは、完全にECで、新しいもの、世の中にない画期的なもの、凄いものできた、どう?という感じ、と仰ってました。

この日本的な『想い』みたいなところが、僕自身が感じるクラファンが「ファンと一緒に」というところに繋がってる気がします。

ECサイトで予約受付するのと、クラファンで予約受付するのでは、ユーザー側のモードも違うんでしょうかね。欲しい物をただ買うというだけでなく、クラファンの場合、もっと直接的に運営者や実行者と繋がって、その人たちやブランドに声をかけてるような、リアルに繋がってるような、そんな雰囲気があるように思えるんですね。

もちろん、色んなクラファン見渡してると、所謂、昔の「テレビ通販」的なプロジェクトも沢山あります。斬新なアイディア商品、とてつもない機能を持った商品など、世の中にまだ知られてない凄い商品をクラファンに持ち込むことで、新しいもの好きを捉えようという狙いでしょうか。

クラファンサイトの性格にも寄りますが、何か新しい物を探すイノベーター的なユーザーが既に沢山付いてるクラファンもあります。

新しいもの好きだけをターゲットとして、クラファンだけで売上を上げていくという、完全にECプロットホームとしての使い方もなくはないかと思います。

ただ、国内のクラファンだと15-20%ぐらいの手数料がかかります。これはECサイトとして見た時にはかなり高い手数料です。

なので、クラファンだけで利益を確保していこうと思うと、商品の購入系のものはなかなか厳しいのではないかと思います。

であれば、クラファンはあくまでもキッカケであり、ここでのプロジェクトを通じてファンを作り、ファンと繋がっていくことを考えたほうが、プラットホームの活用としては魅力的じゃないかなと思います。

クラファンって、クラファン開始前にある程度決着ついてるのでは?

本当に革新的な商品、今までどこにもなく、もう一目見ただけで欲しくなる商品。そういうものならいざ知らず、もちろんユニークではあるにせよ、唯一無二とは言えないようなものや、そもそも化粧品のように薬機法の関係もあって、言えることにかなり制限があり、どこも同じようなことしか謳えないようなカテゴリーとかは、実は、クラファン開始前に勝負はついてるんじゃないかと思ったんですね。

それはキングコング西野さんが言ってた「クラファンは集金マシンではなく、信用を換金するマシンだ」という言葉に集約されてるように思います。

まずは信用をどうやって築いていくか。

僕らに十分に信用があったとは思いません。ただ、この6年ぐらいは自社ブランドを立ち上げ一般ユーザーへの露出を行ってきてたこと。また、この数年は特にリアルイベントへの参加も積極的に行い、魅力的な取り組みやブランドを展開するさまざまな人や企業とご一緒させていただく機会が多くあったこと。その中で、少しづつですが、木村石鹸のことを知ってるよ、応援してるよと言ってくれる方も増えてきていた。そして、このシャンプーのことも、開発段階から情報をオープンにしてきた。

こんなことが相まって、今回の予想以上の反響・成功に繋がったのではないかとも思います。

このシャンプーは自画自賛にはなりますが、本当に素晴らしいシャンプーです。でも、素晴らしいシャンプーだからと言っても、仮に6年前、まだ木村石鹸が自社ブランドを始める前に、これでクラファンに挑戦していたら、おそらく今回のようにはならなかっただろうと思ってます。

新商品発売のプロモーション手法としてのクラファン

今まで、新商品の発売となると、発売直後が一番バリューが高いという認識から、(また、当然、真似されるとか知財面の問題もあり)情報は出来る限り隠し、あるいはティザー広告などは行うにしても、中身はぼかしておく、というのがお決まりだったと思います。そして、発表時に一気に情報を広げる。「新しさ」ということを武器にアテンション獲得を行う。プロモーションを仕掛けて話題づくりをする。

大手のブランド力ある会社なら、そのやり方でも十分です。これでメディアも取り上げてくれるでしょうし、人々の話題にもなります。

しかし、これだけ新商品が毎日のように発売される中、ほとんど知名度のない僕らのような中小零細メーカーが、新商品発売だといくら叫んでも、それがどれだけ画期的なものであっても、殆どの場合、素通りされてしまうのが普通ではないかと思います。

であれば、まず、身の回りの知ってる人たちだけでも良いので、早くから情報を発信して、その人たちに興味を持ってもらう、その人たちから他の人に波及していくことを考えたほうが適切です。そして、その延長で、クラファンをプラットホームとして、商品発売や予約をイベント化・お祭りにする、という方法は、中小零細企業にとっては、普通に新商品発売するよりは、ずっと効果的であろうと思います。

あ、ただ、これは、単なるプロモーションの手法として捉えられるとうまくいかないなと思います。当然ながら、根底には商品なら魅力的な商品があることが前提です。そして、その商品やサービスを提供する側にも、強い想いがないとダメでしょう。

どうしようもない商品を、クラファンをフックにして、初期プロモーションをやろうというのは、まぁどうでしょうか。あんまりうまくいかないとは思うんですよね。特に日本の場合は。「想い」の部分みたいなものがないと、ファンもそれに応えてくれないというか。想いが増幅していかないような気がします。

クラファンの手数料などを考えたら、これだけで完結して利益を上がるというのは、なかなか難しいと思うので、これをスタートとして、支援してくれた人たちとどういう関係を築いていけるかがより重要なはずです。その時に、やはり支援した人が失望するような商品やサービスであれば、うまくいかないだろうなと。

木村石鹸も、シャンプーのお届けはこれからです。モニター調査での評価もあるし、自信はあるんですが、でも、期待が高すぎて失望させてしまうと、それもどうかなとは思ってます。

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