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エレベーターピッチでは説明しきれないものを

エレベーターピッチなんてことをよく言われる。VCや投資家から投資を受けるためには、エレベーターが目的の階に着くまでのわずかな時間でそのビジネスの魅力や優位性を伝えられなければならない、なんて意味だったかと思う。要は、自社の魅力は簡潔に簡単に伝えられるものでなければならないということだ。

Amazonのビジネスモデルは、レストランの紙ナプキンに描かれた、なんていう逸話もそれっぽい話だ。

ビジネスモデルの魅力や、技術的な優位性といったもので勝負するベンチャー企業や、それこそ最終目的をバイアウトにおいてる企業なら、エレベーターピッチは特に重要かもしれない。

しかし、ボク自身は企業の魅力や優位性みたいなものは簡単には語れない、説明できないところにこそ存在しているんじゃないかと考えている。

簡単に言葉にできない、説明できないからこそ、「強い」「競合優位」だったりすることのほうが多いのではないかと思うのだ。

そういう強みを持った会社というか組織のほうが、簡単にはへこたれないんじゃないか。そして、そう。説明しずらい領域ってのは、そのほとんどが「人」に依存するところだったりする。

例えば、サウスウェスト航空の強みは「旅客機の統一、不要な機内サービスの廃止、短距離輸送へのフォーカス、飛行機の陸上待機時間の短縮などを通じて徹底的な効率化をはかることで、格安運賃を実現する」ということにあるのではない。

もちろんそういった「モデル」というのは重要だろうけれども、そんなものは他の航空会社だってやろうと思えばできる。

サウスウェスト航空の強みは従業員の会社にたいしてのロイヤルティの高さや、仕事に対する熱意みたいな、非常に漠然としたものだ。

そういう曖昧なものをベースとして、個々の業務がポーターの言い方を借りるならフィットしあっているということだ。そこに強みや優位性があるわけだ。そのベースがなければ、格安中距離路線モデルの成功はない。

でも、サウスウェスト航空の強みって、たぶん「エレベーターピッチ」としては面白くないものなのだろう。

「人」ってやつは損得だけでは動かないし、数学の方程式みたいにきちんと解があって、こうやってこうやったったらこうなる、みたいなことがない。

会社のミッションに「従業員は協力、励ましあい…」みたいなことが掲げられていても、それが実践できるかどうかはまったく別の話だ。

投資家などにとっては判断しにくい材料だろう。いくらそんなこと言われても、それが会社の成長や業績にどんな好影響を与えるのかということを数字として明確に説明できるものでもないし。

木村石鹸の強みは何かと聞かれても、僕は分かりやすい簡潔な一言で説明したくないなと思ってる。あえて言うなら社員の高い自律性と、自分事化能力だと思ってるけど、それがなぜ強みなのかは、多分、外の人からは良く分からないと思う。そして、社員も良く分からないとは思う。でも、そういうものかなと思ってる。

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