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オーディオドラマプロジェクトについて

いまオーディオドラマを制作しながら教育活動を行う団体を設立する準備をしています。

きっかけは、岐阜の市民ラジオが行った企画でした。
それは若者がラジオドラマ制作を通じて生きる力を育むというもので、
2018年の8月に始まり2019年の2月に終了しました。以下概要です。

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2018ラジオドラマプロジェクト
参加者:17歳・4名、18歳・1名、23歳・1名

①4回の稽古
②ドラマ収録
③座談会公開収録
④ドラマ・座談会放送
⑤振り返り会
⑥文章作成
⑦動画作成
⑧動画上映会

①プロの劇作家・劇団座長を招き、初心者・経験者織り交ぜ
配役を決定し、稽古。
②スタジオで収録
③市民ラジオの番組として公共スペースでの公開収録
④コミュニティFMの番組として放送

①~④各段階での気付きを毎回記録し、ラジオ放送後に
それらデータをもとに振り返り会を行う。

⑤振り返り会で作成した”自分の思い”をまとめて⑥文章化。
⑦作成した文章をそれを自らナレーションとして録音。
記録写真やイメージ画像を付加し動画を制作。
⑧上映会で参加者同士や外部の人と感想をシェア。

記録ページ
https://www.facebook.com/radiodramaproject/

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通常のオーディオドラマ制作との違いは、
⑤以降にあります。
動画の制作や他の参加者との意見シェアによって
自己対話を促し、心の成長を目指す
「デジタルストーリーテリング」を取り入れています。

動画の制作の過程はまさにマルチメディアです。
自分の書いた文章・それを自ら朗読し動画を作る。
様々な形で自分を客観視する作業を繰り返すことで(しかもそれが楽しくできることがポイント!)自分を深掘りし、同時に心がオープンになっていくのです。

この作業、ひとりひとりに対話しながら寄り添いました。
対話が深まり、それぞれさまざまな話の中、感極まったり、開放されて涙を流したり、いままで話せなかったことを聞かせてくれたり、心に響く場面がいくつもありました。

上映会は参加者やプロジェクトスタッフの他、活動に興味を持ってくださったメディア出身者や教育関連の方々にもお越しいただきました。

ひとりづつ動画を上映し、他の出演者や大人たちと、感想や質疑応答をシェアしていきました。

客観的に自分の作品を鑑賞し、他者の声に耳を傾ける。読む、演じる、書く、話す、構成して動画にする。
その全ての段階で自己を見つめることを繰り返す。

動画制作の過程では、スタッフと1対1の対話からどんどん世界が広がっていきました。

ただラジオドラマを演じるだけでは得られない、
たっぷり時間をかけて自己や他者との対話を重ね、自分の世界観を育てていく。

普段の学校生活でも決して体験することのない
自分を掘り下げる行為。
これこそが進路を見据えるために必要なことなのだと思います。

今回の動画作成の過程でも素直に自分の気持ちを
伝え出す変化が見られました。対話の効果です。

その後、出演者たちに進路選択の変化が見られました。
高校生の参加者は、進路決定を迫られ焦っている状態でした。
自分と向き合うこともせず、誰かのモノサシを借りて自分を測り進路を決める。
ハッキリそう自覚はせずとも、漠然と進路選択に疑問を感じていたこと。

何か得られるものがあるかもとこのような校外活動に自主的に参加した原動力のひとつになっているかもしれません。

さまざまな方法で浮かび上がらせた「自分」を
把握し、彼らは主体的な進路選択をはじめました。

自分が何に喜び、何を求めて、どんな場所に身を置き、何をすべきか。
これらを考えることは、前向きに「未来の自分」を見つめることであり、まさに生きる力を生み出していることなのです。

その過程に寄り添い、見守ることは、大人であるスタッフにとっても刺激的で自分を変容させる貴重な時間となりました。

生きる力とは、明日を生きる意味を感じること。
生きたいと思う理由ではないかと思います。

生きる意味を感じるのは、居場所・役割・他者との繋がりが自覚できる状態ではないでしょうか。

居場所と役割を見定めるには、
自己と対話しながら客観的に自己を見つめる作業を経て、ある程度自分にどんな特性があり、何を喜び何を嫌い、何を求めているかを把握することが必要です。

その上でどこに自分の身を置くか、何をするか決めることにより、よりよい選択が可能となります。

加えて自分が今までどんな変化をし、これからどんな変化をするのかということを考えるのことも必要です。

また、他者との繋がりは、対話を通じてどんな特性があり、何を喜び何を嫌い、何を求めているかを相互理解し、同じでなくてもそれを尊重できる相手と関わることです

「居場所・役割・他者との繋がり」は心理的安定性をもたらし、生きる意味を作り出します。

この対極にあるものが孤立です。

生きる力を育むこと。

私はこれらを通信制高校とフリースクールでの20年の教育活動において、半年から一年じっくり時間をかけて若者が自己対話するきっかけとなる
「他者」になり、その変化に寄り添い新たな場所へ羽ばたく手伝いを行ってきました。

私の教室では、卒業式で全員にスピーチをしてもらいます。その時「初めてここへきた時は…」と振り返った時、多くの卒業生からは

「絶望」「諦め」「不信」

などの言葉が出てきます。
まさに生きる力を失っている状態で彼らは私のもとに辿り着いていたのです。

それが時を経て卒業を迎え、自信をつけた明るい表情で、自分がここに来たこと、ここで進路を見つけたことなど自らの選択を肯定します。

自分が人前で話すようになるなんて信じられないと言う生徒も少なくありません。
ひとりひとりと丁寧に対話を重ね、自己対話を促すことは時間がかかる。
それは仕方のないことだと思っていました。

しかし2018年のラジオドラマプロジェクトでの多角的な自己客観視ができるワークでは、数ヶ月で1年かけて対話したことに近い効果を参加者に
見いだすことができました。

このダイナミックな体験を多くの若者、いや多くの老若男女に感じてもらいたいと思っています。
そのためにオーディオドラマを通じた教育活動を定期的に行う団体を作朗としています。

経過はまたここでご報告します。


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