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共感消費とか応援消費とかの"利用価値"(前編)【基本すぎるマーケティングのお話/004】

欲求五段階説で有名なマズローって、晩年に六番目の欲求として「自己超越」を設定してたって知ってました?かなりのスピ系ファンとしては、ひと知れずドキドキしちゃいますけれども。

そのマズローの五段階あるいは六段階にぴったりは合わないんですが、モノが充足してから何十年も経つ日本のような社会では、モノで人々の気を引くのは難しい、と言われて久しいですよね。

一方、人間は貧しい時には協力し合うが(共同防貧と言いますね)、豊かになると個人主義に走ることも知られています。

貧しいのに孤高な人ってなんだかカッチョエエけど、生存可能性は著しく下がる。だからみんなで助け合って全体の生存確率を高める。貧しい社会が人の温かさで溢れがちなのはそのためですね。

逆に、自分だけで生きられるようになると、人との付き合いを極力避けるようになる。人間ってホンネでは人づきあいしたくないんですかね?


寂しがり屋の現代人

まあそれは良いとして、でも豊かになってあまりに個人主義に走りすぎたせいで、あるいは人と接しなくても生きていける社会システムがますます高度化していくせいで、逆になんだか寂しくなっちゃって、再び人との繋がりを求めるようになったことが、最近言われる共感消費とか、応援消費ってものの背景にある気がします。(推し活はその最たるものかもしれないですね。)

商品の裏にある誰かの頑張りや、こだわりや、悲喜交々に共感して、それを応援したくなって買う共感消費や応援消費。

実際問題、商品のホームページやSNSなどでそういう情報に接して、心を動かされて買った経験が私にもわりとたくさんあって、で、それって実際なんだかすごくキモチイイ。

人間って、衣食足って余裕ができたら、共感できるものや応援できるものを探してでも、誰かと心が通った気分になりたいんですかね。たとえそれが商品購入というかなり間接的な行為であっても。

クラフトブームも広い意味では同じ文脈かもしれませんね。クラウドファンディングなんかはもろ「貢献してる感」ありますよね。

時代の風は明らかにここに吹き込んでますね。貧しい時代はみんなで助け合った→個人で生きられるようになって自己中に走った→いろんなことを経験して絆の大切さに気づいた。なんだかよくある青春ドラマの筋書きみたいですが、日本社会はイマココですね。

極端に言えば自分のお金を他人のために使うようでもあるこの行為、晩年のマズローが主張した欲求の六段階目「自己超越」に足を踏み入れつつある、と伏線回収したくて仕方がない(笑)


共感消費や応援消費の”利用価値”

この共感消費や応援消費、マーケティング的にはいくつもの利点があります。(「◯◯的には」って言い方、むかしある作家センセイの前で使ったらエライ剣幕で怒られたのを思い出してしまった。。なんであそこまで怒られたのか。。ニホンゴの乱れが許せなかったのか、私のことがキライだったのか、たぶん後者笑)

利点1)
それを作ってる「人」のことを気に入って買ってるんで、リピートにつながりやすい。

利点2)
背景にある「物語」に心を動かされてるんで、推奨につながりやすい。(その「物語」を周りに話したくなる。)

利点3)
そして、それを作った人やその物語は当然のことながら唯一無二のものだから、それはそのまま独自価値になれる。(独自価値とは何かについては、前の記事読んでね。)

利点4)
お客さんから褒められたり応援されたりするんで、それを作ってる人や組織全体のやる気アップにつながる。

コロナ禍を乗り切った飲食店と乗り切れなかった飲食店の差も、この「お客さんと関係を作れていたかどうか」ですね。(あと、そのお客さんに連絡できる手段があったかどうか。絆があっても「元気でやってるんで来てください」って連絡できなかった飲食店はキツかった。)

とても幸せな世界

そしてこれは、小さいお店や会社が、鬼ばかりの世間と渡り合っていくとても強力な武器になり得る。

「じゃあ商品に想いとかこだわりとか別になくてやってるアタシはどうしたらいいの?」

ええと、モノを作るならちゃんと心を込めてこだわって作ってください。商売ってそういうもんです。自分の思いや信念のない商売は、早晩滅びます。儲かるからという理由だけで、タピオカ屋や高級食パン屋を始めちゃった人たちの末路が示しています。

小さいお店だけではなく、大企業だって、共感消費や応援消費をしてもらえるような経営をしているかが問われる時代になってますよね。

そして、たぶんこの国の優位性でもあると思います。

正直、私の大好物な世界で、たぶん「社会を明るくする運動」でもあると思います。

だって、お客さんと共感で繋がれて、モノを買ってもらえて、ファンになってくれて、口コミもしてくれて、褒められた社員たちはもっとやる気になってって、言う事ことなしの世界ですよね。お客さん側も幸せな気持ちになってくれてるっていう。

ひとつだけ問題があって、職人気質でものづくりしている人ほど謙遜しがちで口下手。自分たちだけの物語を紡ぐのが下手だし、そもそも自分たちのやってることがそんな大したことないと思っちゃってる。唯一の問題だけど、かなり大きな課題でもある。

だから僕らみたいな、ちょっと引いたところから隠れた価値を見出す立場の人間が必要で、そういう人たちが内包する素敵な物語を表に出す人間が必要とされるんですな。いやほんと、これがマーケターの社会的価値の、いちばんキラキラしてる部分のひとつだと思います。

ちょっと長くなったんで、共感消費や応援消費を成功させるポイントについては次回!





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