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【ブランド戦略論】引き算する勇気

・なぜ、アップルに、デジタルカメラがないのか?
・なぜ、スターバックスに、ホットドッグがないのか?
・なぜ、グーグルのトップページには検索窓しかないのか?
・なぜ、無印良品に、カラフルな洋服がないのか?
・なぜ、ジャニーズ事務所に、女性アイドルがいないのか?

あなたは説明できるだろうか?
これが説明出来ない人は、「足し算経営」の思考を持っている。

「足し算経営」とは、他社と差別化するために機能や商品を追加し、強みを伸ばせない経営である。

商品を減らすことが売り上げを下げてしまうと不安になってしまう経営者が多い。

もし、あなたのブランドを強化して、顧客をファンにつけ、口コミを広げて事業で成功したいなら、この本が参考になるだろう。

今回は、現代にもっとも必要な「引き算経営」について書かれた岩崎邦彦氏の著書、『引き算する勇気』を紹介する。

岩崎邦彦(Iwasaki Kunihiko):1964年11月 (年齢 55歳)
静岡県立大学経営情報学部教授・地域経営研究センター長。専攻はマーケティング。主な著書に『小さな会社を強くするブランドづくりの教科書』『小が大を超える マーケティングの法則』(日本経済新聞出版社)、『スモールビジネス・マーケティング』(中央経済社)、などがある。


足し算が並ぶ家電量販店

家電量販店にいくと、数えきれないほどの商品が並んでいる。

炊飯器を例にとると、本来の米を炊くという目的に本当に必要なのだろうかという機能ばかりがついた炊飯器が並んでいることに気が付くだろう。

 1・沸騰温度の持続性
 2・加熱方式
 3・内釜の素材と厚さ
 4・ご飯の炊き分け機能

どこかのメーカーが「土鍋圧力」の炊飯器を発売した際、揃いも揃って各社が「土鍋圧力」炊飯器を展開しだしたときは、面白いなと思ってみていた。

現代の日本企業は、付加価値をつけるために、他社と差別化する機能を付けたら、他社を追いかける商品を展開し、個性を見失っていることが多い。

しかし、人が魅力を感じるのは、本当に多機能な製品だろうか。

Appleやスターバックス、Googleや無印良品がなぜ大きなブランド力を持っているのか。

答えは消費者が持っているに違いない。

消費者から見えてくる引き算の必要性

ある面白い研究調査がある。

「シンプルな商品は〇〇である」
「機能が多い商品は、△△である」

という問いに対し、穴埋めをするという調査(全国1000人の消費者調査)だ。この回答が実に面白い。

「シンプルな商品は〇〇である」に対する回答(人) | 上位10項目
・使いやすい(162)
・簡単(85)
・スタイリッシュ(78)
・安い(76)
・長持ち(61)
・高品質(43)
・好き(41)
・飽きがこない(35)
・ベスト(17)

シンプルな商品に対する回答は、総じてポジティブな物が多い。対して、多機能な商品に対する回答は。

「機能が多い商品は、△△である」(人) | 上位10項目
・使いにくい(118)
・高価(106)
・便利(88)
・複雑(72)
・壊れやすい(48)
・面倒(34)
・無駄(30)
・難しい(19)
・楽しい(15)

多くの回答がネガティブなものになっている。

多くの日本企業が機能で勝負するなか、競合他社に負けないために機能を追加し続けているが、消費者は「なんかごちゃごちゃしててわかりにくい」と感じているのだ。

シンプルなものは小さくても、強い。

もっと身近なもので例えると、スマートフォンがある。

多くの人が持っているApple社のiPhoneは、とてもスタイリッシュで機能もシンプル。他のAndroid製品を寄せ付けないブランド力を持っている。

製品のスペックや、端末の機能でできることで言えば、圧倒的にAndroidの方が大い。

それでも、シンプルな見た目と革新的な機能を持ったiPhoneはどの携帯会社とも競合にならないようなブランド力を発信し続けている。

引き算のブランド力は、競合をつくらないことにも繋がる。

もう一つ調査例を紹介する。

家にある「リモコン」をみてみて欲しい。いくつのボタンがあるだろうか。いま、自宅にあるテレビのリモコンをみたところ、68個のボタンがあった。

ちなみに、押したことがあるボタンは13個。

家に来て4年になるテレビだが、なんと55個ものボタンを押したことがない。あらためて数えて、少し笑ってしまった。笑

「理想のリモコンのボタン数は?」という研究調査がある。
その回答は、まさかの『3つ』だ。

ダイヤルをホイール式にすれば、「電源」「ダイヤル」「録画」くらいで使えてしまうのだ。

人を引きつける引き算

アップルも、スターバックスも、グーグルも、無印良品も、ジャニーズ事務所も「引き算企業」だ。

何かを引くことで、顧客を引きつける自らの引力を引き出している。

ただし、引き算経営の重要性に気がつき、いざ引き算をしようとしても何を引いたらいいのか見極めるのは極めて難しいだろう。

もちろん、何もかも引き算すればいい訳ではない。

『間違った引き算』をしてしまった企業は、取り返しが付かなくなり、そのまま沈んでしまうだろう。

これから、顧客をファンにつけ、自社のブランド力を強化し、適切な引き算をして売り上げをあげたいのであれば、岩崎邦彦の著書『引き算する勇気』は必読・必携の指南書である。


「勉強になったー!」と思っていただけて、ちょっとコーヒー1杯おごってもらえたら喜びます(笑)