パースつきの背景を描いてみた話
新しいイラストを描きました。掌編小説と寸劇のサムネイル用で、聖騎士シリーズよりルカリス先生とデイルズ(創作キャラ)です。
デイルズが熱を出して寝込んでいるところに家庭教師のルカリス先生がやってきた、という設定のお話です。過去編。
■ 今回の制作テーマ
今回はパースのかかった背景を描けるようになりたいと思い、窓とベッドのある部屋を描くことにしました。
前回同様デッサン人形の写真を下敷きに使っていますが、制作を始める前にエスキースという工程を挟んでいます。そうして日常的に小さなスケッチをためておけば、後日その中から進めたいものを選ぶことができてとても便利でした。
■ エスキース(下絵)を描く
今回はまず、コピー用紙の上に描きたいシーンのアイデアを小さく描き出しておくことから始めました。この下絵のことを美術用語ではエスキースと呼びます。
私が今回体感しただけでもこれくらいのメリットがありました。
始める前は描き出してしまうと頭の中のイメージが壊れるかも?と思っていたのですが、イメージといっても意外とぼんやりしていることが判明しましたし、頭の中で実験するよりも紙の上で実験したほうがアイデア同士の比較検討が圧倒的に楽です。
余談ですが「アイデアを出す脳」「絵を組み立てる脳」「違和感のある部分を修正する脳」はそれぞれ別物のように思います。作業コストもそれぞれ違って体調によって得意な認知が変わったりどれかの機能がダメになったりもするので、着想から仕上げまでを一気にやらず作業工程を細分化しておくのは良いことなのかもしれません。
■ デッサン人形の写真を撮る
今回は手前にいるルカリスのみデッサン人形から素体を描き起こすことにしました。ベッドの高さや大きさ、パースのかかり具合を確認するために箱を配置しています。
ベッドに寝ているデイルズは頭の大きさや枕の位置を確認するため、大好きな星のカービィちゃんのクッションを自分の布団に寝かせて写真を撮りガイドにしました。恥ずかしいのでお写真は割愛しますが、めちゃくちゃ可愛いのが撮れました。
■ 背景ラフと素体を描く
ベッドに見立てた箱の直線をたよりに、パース確認用の補助線を引きます。奥へ向かう消失点のみ画面内にある状態で、残り2方向への補助線は勘です。縦方向だけでも完全に垂直にすればよかった。描きやすかっただろうに……。
補助線を早く消したかったので窓のパーツや壁、ベッドなどに色を仮置きしています。
キャラクター素体は前回同様マーカーブラシでザクザク描きました。この時点で頭とお胸が大きいなと感じていたので調整しています。首は少し太くしました。肩まわりのボコっと感も気になりますが、この時点では直す方法が見つからず。別の教材を使って重点的に練習したほうがよさそうです。
■ パース用のガイド機能について
ちなみに絵が完成した後で友人に教えてもらったのですが、Procreateにはパース用のガイド機能があるんです!!!!! それを使えばよかった……(涙)
左上のアクションメニューから
・キャンバス
・描画ガイド(ONにする)
・描画ガイドを編集
・下の項目で「遠近法」を選ぶ
でパースガイドが作れるようになります。
任意の場所をタップして消失点を追加、3つで3点透視図法ができるっぽい。あと地味に水平線のガイドが出るのがありがたいですね(青色の横線)。
次は使おう。
■ 線画と仮塗り
人物の線画とカラーラフを同時に進めていきます。この時点で背景と人物に分けて全体影用の乗算レイヤーを作りました。
線画と色塗りを進めていきます。この時スカートを描いてみましたが女子高生の制服ぽくなったので後でやめました。この時点で頭が大きいな〜と思いつつも作業を進めていきます。
■ 全体光と線画(2人目)
全体にかかる光(レイヤーモード:スクリーン)をルカリスの髪と掛け布団に加えました。いつもは肩にも光を置くのですが十分明るかったので見送り。
髪は光で透けている感じにしてみました。コーラルカラーのエンジェルリングも描きつつ。メッシュを描くと一気にルカリスらしくなる感じがします。
ここでようやくデイルズの線画に入りました。
■ 背景テクスチャの追加
デイルズの下塗りをしつつ、背景を描き進めました。全体に乗算レイヤーでテクスチャを置いています。この後、窓や枕などテクスチャがあると不自然な部分は消します。
なんとなく色味がさみしかったので画面奥にワインレッドのカーテンを描き足しました。一気に生活感が出ました。
■ 人物描き込み + 窓からの光
人物を描き進めつつ、窓からの光を演出。線の方向で光の方向が決まってしまう感じがして迷ったのですが、ちょうど画面に動きも欲しくなっていたので右上から左下に向けてコーラルカラーで描きました。
デイルズの瞳の一番上の部分にレイヤーモード:差の絶対値のターコイズを入れたらちょっと不思議な感じの色味になったので気に入っています。
■ 下からの照り返し + アクセントカラー
細かいところでは窓枠の光の当たっている部分や、ベッドの背もたれの柄を描くなどしました。あとはカーテンの横に本棚っぽい家具を置いたり。ちょっと閉塞感が出て二人の距離が縮まったような気がします。
この辺りで完成のつもりだったので、下からいつもの照り返しカラーライトを入れました。全体的に茶・オレンジ色の画面だったのでアクセント的に青緑。このライトの色は最後の最後まで迷ったポイントです。
デイルズの髪はストーリー上のあることを思い出して一部を赤くしました。大人になってからの彼と幼少期の彼がようやく地続きになった感じがします。
■ 気になる部分をとことん修正
ルカリス先生の右手を画面下にちょこっとだけ描いたり、ブラウスの形や光の当たり具合を直したり、リボンに1色明るい色を足したり。あと頭の大きさを小さくして、ボヤッとしていた前髪をわかりやすく描きました。
デイルズはお顔の形やパーツ配置を細かく直しました。年齢が1歳〜1歳半くらい上がった感じです。
あとは掛け布団の陰影を整理したり、全体の色味を統一するために全体影を薄紫から黄色っぽく変更したり、下からの照り返しレイヤーのカラーモードや色味を調整したりしました。
■ 写真アプリで加工して完成!
今回はどう仕上げていいか迷った結果、最終調整を友人に託しました。写真アプリの編集機能を使って仕上げていくのですが、ストーリーの内容を話したところ、全体のコントラストを薄くした上で四隅に影を入れる「ビネット」を使ってくれて……。
最近のイラストは「触れるように」「ありありとそこに存在するように」描くのが良いと思っていたのですが、それが1枚ベールを隔てて一気に「過去の美しい思い出」になってしまって、今となっては触ることができなくなってしまった感じが切なくて……。
神解釈でした。本当にありがとう。
■ おわりに
総作業時間10時間半。長かったです。シリーズ最長記録を更新してしまいました。描けるようになったら作業時間は短くなるものとばかり思っていたのですが、毎回新しいことに挑戦しているせいか長くなる一方です。
でも背景を描くのは嫌いじゃないかもしれない……と思い始めました。構造物が好きなので建物とか描くのは意外と向いているのかもしれないし。何よりパース系は計算すれば正しく描けるのが良いです。人の顔だとそうはいかない(魅力という意味で)。
ようやくデッサン人形から素体を作るのにも慣れてきたので、この手法はもう少し試してみたいなと思っています。
(あとキャラシートというか、設定資料的なものを描いておきたい。誰かに託したくなったときに絶対に役に立つから……!)
ここまで読んでくれてありがとうございました。
おやすみなさい。
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