幼保無償化は幼稚園の終わりの始まりとなるか

私にはいま幼稚園の年長で4月から小1になる上の子と、4月から年少になる下の子がいる。下の子の幼稚園をどこにしようかと、夏から秋にかけて近隣の幼稚園をいくつか見て回ったが、本人の強い希望もあり、最終的には上の子と同じ幼稚園に行かせることにした。

私の住んでいる区では、11月の面接と入園手続きが終わったあとの私立幼稚園の空き状況が区のサイトにアップされているのだが、ほとんどの園で新年少が定員割れしている。ママ友の噂レベルでも、近隣の園はどこも来年度の年少は定員割れらしいよーと聞いていたが、ここまでとは。新年中・年長は空きがないところも多い。いま上の子が行っている園もそうだし、近所にある、願書が先着順のため、今の年長の学年では2日間並ぶ必要があったという人気の園ですら新年少だけ空いている。

幼保無償化のため、幼稚園よりも保育園が圧倒的にお得になったのでこうなったのだろうと思う。東京の認可保育園、3歳児が激戦化の「異変」という記事があり、ここでは「受け入れが2歳までの認可外保育施設の増加」と「育児休業の長期化」が原因で認可保育園の3歳児クラスが激戦化したと推測されている。これらに加え、子どもが2歳までは片働きの家庭保育でやってきたが、次年度からの幼稚園と保育園を検討した結果、無償で預かり時間も長い後者を選んだというのもありそうだ。なお、こういう子育て政策関連のニュース記事、すでに保育施設に預けて共働きしている世帯や長い育休が取れるような正社員の動向は気にするが、片働きで家庭で子どもを育てている家族がどう考え今後何をしたいと思っているか、まったく気にしておらず調べてもいないように見える記事が多い気がする。

そもそも幼保無償化というが、コストがいくらかかろうが全額補助してもらえるのは認可保育園だけで、私立幼稚園は無償にはならない。月額2万5千円〜3万円程度の補助(自治体によって違う)があるだけで、土地代や保育コストの高い東京では、プラス数千円くらいは払うことになる園が多いと思う。そもそも幼稚園は保育園の半分ほどの預かり時間(うちの近所では、月・火・木・金曜は9時から14時まで、水曜は同11時半までで週あたりの預かり時間は22.5時間の園が多い)で、その分子供を多く家庭保育し、そこにもコストがかかるのだが、そこには手当てがないので、長時間預ける方がお得である。無償化開始後、保育園で延長保育が激増して保育士が疲弊しているというニュースも見かけた。

話はそれるが、上の子の同級生で感覚過敏などがあり、集団生活になじめなくて年少で幼稚園を辞めた子がいるのだが、そういう家庭保育の親子を支援しなくてよいのだろうか。子育て支援というなら集団生活ありきではなく、保育園にも幼稚園にも入れない親子も支援するべきではないか。

今後、幼稚園というものは歴史的使命を終えた、として、保育園も増え、子供の数も減っていくのにあわせてなくなっていく流れなんだろうなー。幼稚園の、午後2時に預かり終了、長期休みあり、という仕組みは近所の子育て家庭のほとんどが片働きで近隣コミュニティが生きていて、幼児も4歳以降くらいなら子供だけで遊んでも良いよね、という空気があった昭和の一時期にだけ適していたのだろう。それらの条件がなくなった現代に昔ながらの幼稚園ではワンオペ育児に苦しむ時間が長くなるだけ。それよりは賃労働して早くから保育園に入れた方がいいと考える人が多いだろうし、政策もそういう生き方を後押ししている。私はまだ子育てと賃労働を両立する勇気が出ないので、そっちの道は選べないけど。

私立幼稚園は園児が少なくなれば閉園したり保育園に転換したりする。もし将来、幼稚園がなくなってしまったら、小学校入学前に子どもに集団生活を経験させたければ、保育園に行かせるしかなく、子どもを途中で退園させたくなければ絶対に一定時間以上の賃労働をし続けなければならないという状況は個人的にはとても辛いが、どうなるのだろうか。


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