見出し画像

個展のこと、作品のこと(記録)

DM_ふたり

作品を作り上げたのは3月末。個展は4月いっぱい。
いまはもう5月も下旬。

月日が経つのは早くて、というわけではなく
今まで以上に作り上げた後の「ぽっかり」が大きいような気がする。
という言い訳をして、重い腰を上げて個展のことを書いていきます。

個展のテーマについて

4月2日〜4月30日 池袋cafe lampにて。
個展「ハコニワ」開催。

画像1

池袋は学生時代から15年ほど住んだ街で第二の故郷でもある土地でした。
そんな場所で開催できたことに感謝。

今回の個展は「ハコニワ」と割と早々にテーマを決めていました。

平面であるイラストレーションをどうやったら立体的に見せられるか
ハコニワはこの問いに挑戦した展示です。
重ね絵、3Dモデル…など様々なアプローチを実験しています。
いろんな形の「ハコ」になった私の作品を「ニワ」を散歩するような気持ちでご覧いただければ幸いです。

デジタル作品の展示、というのはなかなか難しくて
今回は個展なのでアナログの絵と並び立つこともないのですが
やはり展示される印刷されたデジタルの作品は「原画」ではないんですよ。
個人的には「オリジナル」と言えるのはやはり「データ」なのだと感じます。

展示されるために印刷された「だけ」の作品は
PCなどのモニターで見る「オリジナル」にどうしても勝てない。

アナログ作品が複製よりその筆で描かれたそのものが良いのと同じ原理です。

私がデジタルを使って作品制作するようになったのは理由があって
右手の腱鞘炎がひどいからなんです。
描き上げるまで筆を持ち続けることはこの右手ではもはや無理でしょう。
そこで画面にタッチすれば線が描けるiPadの制作にうつったのです。

それでも、デジタル制作になったあとも「展示」という形のお披露目をしたい
単に印刷して展示されたものは複製に過ぎない
このふたつの命題があって、デジタル作品の「展示」ということをあれこれと考えてきました。

そこで出てきたのが
平面であるイラストレーションをどうやったら立体的に見せられるか
というテーマだったのです。

個展にご来場して入り口から順に見ていく、という想定で紹介していきます。
(カフェ開催だったので、ほぼその順で見ている人はいなかっただろうけど笑)

作品紹介:物語・重ね絵

絵の内容は「物語性」がテーマでした。

画像4

「荒野のユニコーン」
どんな荒れ果てた世界でもその馬が走ると虹が出て幸せが訪れる。
そんな魔法のようなユニコーンに出会って始まる冒険のものがたり

画像5

「おやすみ」
眠れない夜、なんだかこわくなってしまいました。
ロボットのおもちゃで遊んでもくるまのおもちゃで遊んでても、こわいこわいおばけが来るようです。そこに現れたのはやさしいバクのしんくん。すると、楽しい夢のせかいに連れて行ってくれて、、、

画像6

「だれもしらない庭」
そのお庭の存在はだあれも知らない。なんで誰も知らないかって?
お庭の存在を教えられる人がいないんだよ。だってその庭に入ったら…


画像3

展示方法は前にも挑戦したことのある重ね絵の手法でした。

透明なフィルムに印刷し、それを重ねて展示するというやり方です。
今回、前回からバージョンアップさせたのはフレームインフレームという形にしたこと。
手前にマットがあることでこれが立体だと感じさせにくくなっている感覚があって絵の外側にも空間や奥行きを表現したかった、というところです。
そういったわけで作品の後ろに見える額の色などもかなりこだわって
自分でアクリル絵の具で色を作りました。

会場にね…
ものがたりを書いたキャプション作らなかった、っていう最大の反省をしました。

作品紹介:東京追憶・あかり

画像7

画像8

光らせる作品が作りたい、という欲求からうまれた作品でした。
和紙に絵の印刷をして、木枠を作り、障子の要領で貼っております。

中はこんな感じ。LEDが背面のアルミシートに反射して光っています。

画像9

描きたい絵のコンセプトはもともと「東京」というテーマがありました。
東京と光。
東京の風景を描きたい。
それをこのご時世に東京中を取材して見てきてひとつの答えに辿り着いたのが
「ネオン」でした。

06_池袋_統合

追憶Aー池袋の春

06_渋谷

追憶Bー渋谷の夏

06_銀座

追憶Cー銀座の秋

06_東京駅改

追憶Dー丸の内の冬

色が乗っていないところが光が強くなる(はず)という計算の元
絵を描き、色をつけ、組み立て、電気をつけて初めて表現が完成しました。

実は「追憶」として女性の姿を描いているのには訳がある。
私はきっとこの女性を描かなかったら、他の作品もすべてなにひとつ描けなかったと思う。彼女のことを私が残しておきたかったのだ。どうしても。

追憶としてでも。
以前、趣味アカウントのインスタに想いを書き殴っていたのでリンクを貼っておく。

今回の個展がなかったら残せなかったかもしれない。
これを残そうとしなかったら、作品をつくろうってまだまごまごしていたかもしれない。発表したからにはどう受け取ってもらっても良いし、こんな個人的感情を作人に付与して発表するのは蛇足すぎるんだけど。
私にとっては彼女の存在がとてつもなく大きくて、どうしてもそういう人がいたということを書き残したかった。

このタイミングで「個展」という絵でコミュニケーションができる機会があって
だからまた私は作品で生きていけるのだと、すごく感謝した。

作品紹介:神の救い・宙吊り

画像16

Agnus Dei-神の子羊-
キリスト教で言うところの「神の子羊」のこと。人の罪を贖うため生贄となって病を背負い痛みとなる存在。キリストのことを指す表現のひとつ。

05_因幡の白兎

因幡の白兎
川を渡るため欺いた鰐に毛皮を剥かれた兎。八十神に海水にひたり風に当たると治るといわれ重傷に。大国主命にガマの花粉で治ると救われる。

どちらも罪・贄・救いというワードで繋がる「神」の話を題材にしました。
その上で羊・兎という動物を擬人化しロリータ系のファッションを思わせるように仕立てています。
絵としても点描画としての表現を深めるチャレンジもした作品でした。

画像14

展示は「宙吊り」をしたいと思ったところから制作しています。

「立体」ということを「空間」と捉え直した時に平面作品としての絵も空間に存在している。
空間そのものを作ることとその存在感を増すことを意図した作品。
(はい、説明が難しい!)

つまり絵という作品が影を落としたり、透けていたりすることで
額の中の空間自体がすべて作品ですよ〜っていうこと(はい、難しいまま!)

トレーシングペーパーに印刷して、すこし背面が透ける状態になっていて
竹串とテグスで吊って浮いた状態になっています。

作品紹介:DM作品

01_ハコニワ

実は今回の個展ですが「つかはらゆき・柑酉衣豆」の【ふたりなのにひとり】展
というちょっと説明がむずかしいサブタイトルがついています。
(柑酉衣豆=かんどりいと、と読みます)

これはバーチャルYoutuberとして活動している「柑酉衣豆」名義の作品も
同時展示しているということで
どちらも私が作っているけど、名義として2人展開になっているということ。

その架け橋となるのが「つかはらゆき」が描いた「柑酉衣豆」の絵ということで
これがどちらの名義の作品でもない作品としてDM用に描いたものになります。

衣豆さんは服飾デザイナーなので彼女の「ハコニワ」であるお部屋が描かれており
「バーチャル」な存在なのでその「ハコニワ」がデジタル空間にあることを意識した感じになっています。

画像17

唯一、超絶シンプルに特殊紙印刷+額装という作品でした。
特殊紙も凹凸とラメに近い光沢があるものを選び、光沢やインクが乗りきらない部分のニュアンスが出て、面白い印刷仕上がりになっていました。

作品紹介:VTuber活動

画像19

柑酉衣豆名義の作品となります。

彼女はバーチャル服飾デザイナーとして活動しています。
「バーチャル服」を作る「バーチャルデザイナー」として活動しているという方がおそらく正確に伝わるのではないかと思います。

ものすごく簡単に言うと、3Dモデルの着用できる服を作っています。

百聞は一見にしかずということで、お店をご覧ください。

「柑酉衣豆」のことをこんな風に会場では説明していました。

Vtuberとして3Dモデル作成ソフト「VRoid Studio」のお洋服をデザイン販売
「衣豆」という人格はひとつの「ハコニワ」です。衣豆を通して新たな表現に挑戦しています。今回は衣豆の本領発揮、お洋服やイメージフォトカタログをデザインし展示します。

3Dという形態をとった「立体」造形であり、そしてある意味人格そのものが私が表現する「ハコ」であるということなんです。

ここで展示するために創作したものを書き連ねておきます。

・衣装14点のデザイン、3Dテクスチャ制作
・衣装カタログの制作(モデルの公募、ディレクション、デザイン、販売)
・衣装プロモーションムービーの制作
(モデルへの制作指示、コンテ制作、ナレーション台本制作、動画編集)

カタログに掲載された写真を一部パネル展示し、カタログ販売、ムービーの放映をしていました。

画像20

画像21

画像22

カタログは現在こちらで販売中。ダウンロード版は無料です。

そしてプロモーションムービーはこちらです。

VTuber部分だけはどう紹介すると理解してもらえるのかよくわからない…
とにかく服を作りました!カタログデザインしました!ムービー作りました!

まとめ

12月に一度会場にうかがってご挨拶をしてきて、そこから始動していたのですが。
1月〜2月上旬は衣豆さんの洋服制作、2月後半はムービー編集とDM制作で終わり
3月に一気に描き上げた…という形になってしまった。

ふつう、個展というのは発表した・未発表の展示したことない作品が溜まってきて
それをお披露目する「長い期間の集大成」みたいなものだと思うのだが。

まさかのほぼ全部新作。

「馬鹿なんじゃないか」と、作業終盤になってやっと気づきました(遅い)
その分、エネルギーが凝縮された展示になったのではないかと。

いやでもエネルギー放出し過ぎて
作品完成と同時に過労+黄砂アレルギーで高熱出すし
作品完成後ほぼ1か月半廃人みたいだし
もう少し考えてやっていきたいと思いました。

次は再来年の7月あたりに(かもしれない)

作品だけ作っていれば良い生活して、そして池袋にまた住む。
という野望を抱きました。

読んでくれてありがとう!心に何か残ったら、こいつにコーヒー奢ってやろう…!的な感じで、よろしくお願いしま〜す。