[読書]芸術起業論

芸術の世界で、グローバルに日本人が成功することが稀な中、米国で評価され、ルイヴィトンともコラボした村上隆さんの著書です。

独特の世界観を構築し、欧米でプレゼンしているだけあり、主張がてんこ盛りです。
アートに不可欠なお金との関係、歴史の時間軸での芸術の捉え方、価値を創り出して行く方法、人間の能力の引き出し方、と、段階的に重要なポイントが綴られています。

ご自身の経験や考え方を惜しみなく並べているので、クリエイティブを目指す人には、好き嫌いあれども参考になるのでしょう。
もちろん、それほどに切羽詰まる動機がなくても、世の中のルールを踏まえた上でたくさんの人を動かしていくことは、経営者や技術者にも必要なので、誰しも何かのヒントを得ることができると思います。

情熱的に書かれた意見書なので、本書を読んで頂くのが正確なのですが、私的な感想として心に引っ掛かった文を紹介します。

ぼくは「芸術は誰でも作れるもの」と思ってきましたが、表現を続けられるかどうかはもしかしたら「怒りがあるかどうか」が関係しているのかもしれない、と感じています。

しがない普通の会社員ですらこれを思うことはあります。怒りが表れやすい人は、仕事の期待水準や将来の理想も明確であることが多い。現状に甘んじていること、前に進まないことに我慢できないのだと思います。怒りは周りにストレスがかかるので、あまり表に出してはなりませんが、意外と大事な要素なのかもしれません。

それから、村上さんの作品をそれほど知らないせいか意外だったのは以下の文章です。

ちなみに、ぼくの欲望ははっきりしています。それは「生きていることが実感できない」をなんとかしたい、なのです。

まさに戦後の高度成長も終わり、平成を生きるアーティストなのかもしれないと感じました。

☆☆☆

著者 村上隆
刊行 幻冬舎
刊行年 2006年初出 2018年文庫版
https://www.gentosha.co.jp/book/b853.html

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