[映画]家へ帰ろう

仕事納めも終わり、監督や俳優の名前も存じ上げなかったアルゼンチン映画にひかれて鑑賞しました。爽やかな観心地です。

主人公は、アルゼンチンに暮らす八十歳を軽く越えている男性。老齢ゆえに家を売り、子供たちの意向で老人ホームに暮らすことが決まっているのですが、意に染まない様子です。ストレートに不機嫌を表し、孫との集合写真を記念に撮りたいと主張します。

そんな主人公が『残りの人生に向き合う』ために選んだ行動は、故郷ポーランドへの旅。かけがえの無い友人に70年ぶりに会い、最後に自分の仕立てた服を届けるというのです。
不自由な足を引きずりながらのたった一人の冒険。もちろん、さまざまなトラブルが発生するのですが、彼自身の胆力と旅先で出会った人々に助けられ、旅は続いて行きます。

なぜ、主人公が70年も大事な友達に会いに行かなかったのか、連絡さえしなかったのか。それは、彼がユダヤ人であり、ホロコーストの犠牲者だったことが理由であろうことが、旅の過程で明らかになってきます。本当に考えられないほど愚かしく凄惨な歴史です。当事者の心の傷は、他にはわかりようもなく、深い。
心から、戦争のない時代と地域に産まれたことを感謝します。そして、今も戦禍に苦しむ人々がいることを忘れてはならないと。

とはいえ、作品全体の雰囲気は、軽く温かいものです。旅の先々で出会う人たちの包容力は素敵ですし、そして主人公もサバイバル能力が高く魅力的。何より人生を前向きに捉える監督の意志を感じます。とても明るい作品です。
私のお気に入り場面は、最初のほうに出てくる写真嫌いの孫とのやり取り。おじいちゃんも孫も可愛いです。

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家へ帰ろう
監督・脚本 パブロ・ソラルス
出演 ミゲル・アンヘル・ソラ
2017年 アルゼンチン スペイン
http://uchi-kaero.ayapro.ne.jp/info/top

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