[読書]行きたくない

不穏な題名です。
ひきこもりとか、不登校とか、
社会問題となっているこのご時世、
どきっとさせられるアンソロジー。

でも暗い話ではありません。
面白くて一気読みしました。
若い書き手さんたちが、気負わず、
自分のカラーを出しています。
さらっと1つのテーマの複数解が
並んでいました。

トップバッター、加藤シゲアキさん。
独特の世界観は、
「傘を持たない蟻たちは」で証明済。
普通の高校生活を舞台にしつつも、
印象に残る作品です。

ネタバレになりますが。

主人公の男の子が、幼馴染の女子の
別れ話に立ち会う場面が印象的です。
立ち会うといっても、
彼女の別れ話の一部始終を、
近くのカフェの窓越しに観察。
飲み残しのカフェオレ、のような
ディテールがこと細かに書き込まれ、
静物画のように普通の高校生が現れます。

やりたいことのため学校を休む友人を
否応なく意識、きっと少し焦りつつ、
傍観者でいる時間を楽しむ主人公。
どこに「行きたくない」のでしょう。

次の阿川せんりさん、も高校が舞台。
このお話は女子のあるある。。。
ばっさり切り取られ、爽快に読了。

趣向ががらりと変わり、渡辺優さん。
この作家さんを知ったのが収穫かも。
星新一さんや新井素子さん育ちの私、
どこだがわからない不思議な世界に、
ヒトの感情だけはありのまま。
この本1番のお気に入りです。

まだ続きます。小林陽太郎さん。
名前からすると男性と推察しますが、
女子の心の動きをぐっと捉えます。
最近の?男性は繊細なのですかね。
昔も太宰治さん「女生徒」があるのを思い出しました。

お次は奥田亜希子さん。
少し年代が上がった感じのお話。
良かった。相応で。
作家さんも80年前半生まれです。

最後は、著書が映画化されている
売れっ子の住野よるさん。
こういう作品もあるのですね。
「君の膵臓をたべたい」からは
意外な展開でした。

いずれも粒ぞろいの短編集です。

☆☆☆

著者 住野よる、加藤シゲアキ、阿川せんり、渡辺優、小嶋陽太郎、奥田亜希子 
刊行 角川書店
刊行年 2019年文庫版
https://www.kadokawa.co.jp/product/321712000432/

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