[絵本]ねえさんといもうと
ある小さな姉妹の日常を通して、その関係性の微妙なバランスを描いた素敵な本です。
大ヒットした『アナと雪の女王』も、『能力が高いのに臆病で暗い姉を、明るく元気な妹が助けるお話』という面がありますが、似たようなテーマだと思います。
姉は、長子であることに加えて、母になる性であることから、小さいお母さんを求められがちです。その責任感が、長女たちを他のきょうだいを仕切る堂々とした性格に育てるのですが、ある意味緊張しながら過ごしています。一方『妹』は『弟』とも異なり、あまり他のきょうだいを守る役割を求められないことが多いのではないでしょうか。その役割のなさが、次女に人当たり良く天真爛漫な性格を引き寄せますが、彼女たちはある意味窮屈さも感じているはずです。
この本では、いつも仲良しの二人姉妹が、妹のちょっとした反発をきっかけに、今までとは違った関係性を手にいれます。
妹目線で書かれています。お姉さんは何でもできるし何でも教えてくれる。事故に遭わないよう気遣ってくれるし、おやつのレモネードを用意してくれるし、お世話されていれば安心です。ですが、何でも指示されるのに飽きて、妹は黙って家をそっと抜け出します。
探しあぐねた姉さんはしくしくと泣き出してしまうのです。そして妹は、おそらく初めて姉を助ける役割を担うのです。
手を取り合い、ひなぎくの野に佇む二人が本当に可愛らしい。
私自身が長女で、家族全員に『お姉ちゃん』と呼ばれる窮屈さを感じていたので、長女セイは『お姉ちゃん』と呼ばずに育てました。そうなると、割を食うのは静かな次女ゴマです。どちらかが『姉』つまり短期的に我慢する代わりに偉そうにする役割、を引き受けるという役割が固定化していないので、毎度力比べです。セイは声も大きく自己主張が上手なので、割と勝率がよかったりして。
この本を通して、姉ちゃんは一生懸命だけど、しようもない時もあるよね、と次女ゴマに伝わっていると良いのですが。。どうでしょう。
静かな時の流れの中に、優しく深いメッセージが流れていて、手元に残しておきたい一冊なのですが、現在絶版のようで残念です。
☆☆☆
ねえさんといもうと
シャーロット・ゾロトウ 作
マーサ・アレキサンダー 絵
やがわ すみこ 訳
福音館書店
発行年 1974年初出 2006年復刊
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