[読書]100万分の1回のねこ
佐野洋子さんの有名な絵本、
「100万回生きたねこ」に愛を込めて。
というコンセプトの作品集です。
昔から絵本が大好きだった私ですが、
「100万回生きたねこ」は、
響きませんでした。
そのことを書くのはまたにして、
それでも、この本を手に取ったのは、
書き手がとても豪華だったから。
しかも、人の心を描く名手ばかり。
素晴らしい著者たちが、
その持ち味のまま、
「100万回生きたねこ」に呼応して
短編を連作しています。
結構ずっしりきます。
生きるって、
誰かと一緒にいるって、
自由でいることって、
なんだろう。
こういう解もあるのか。。
一編ごとに揺り動かされました。
それでも、全ての短編が、
どんなにやるせないことがあろうとも
世界を美しいものとして描かれています。
掲載順もまた素敵です。
トップバッターは江國香織さん。
ほぼ「100万回生きたねこ」をなぞっているのに、なぜか人間の機微が淡々と語られ、心に迫ってきます。最後の1文に泣きそうになりました。
そこから山あり谷ありあって、
ラストは谷川俊太郎さん。
佐野洋子さんの元夫ですね。
離婚した夫婦の間に何があったかは、
他人には伺いしれませんが、
元配偶者として、芸術家として、
特別な存在なのだろうと思いました。
毎日の生活に忙しいと、
お金を稼げるようにしたいとか、
仕事で認められたいとか、
子供は礼儀正しく育てなければとか、
子供には学歴つけたいとか、
周囲によく思われたいとか、
友人やパートナーとして大事にされたいとか。。
なんて感じで、私欲ばかりなのですが、
そんな悩みや執着は、
ほんとうに大事なことではなくて、
もっと大切なことがあるなと、
一瞬引き戻してくれる一冊です。
☆☆☆
著者 江國香織 岩瀬成子
くどうなおこ 井上荒野
角田光代 町田康 今江祥智
唯野未歩子 山田詠美
綿矢りさ 川上弘美 広瀬弦
谷川俊太郎
刊行 講談社
刊行年 2018年文庫
https://bookclub.kodansha.co.jp/title?code=1000025574
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