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食事と経管栄養@介護食・えんげ食お料理教室

《はじめに》

病院で言語聴覚士として働いているときは、
患者さんがその状況で食べられる食事の形態を評価して、
栄養士さんにお伝えすれば、ゼリー食や軟菜食を出してくれていました。

退院の時にも、
家族さんに嚥下食の作り方を指導してくれていたのは栄養士さんでした。
頼りっぱなしです。

地域で働くようになり、
利用者さんが今ある状況で食べられる食事の形態を評価することは同じだけれど、お伝えするのはご家族さん。
栄養士さんはいません。。。。

もっとこんな工夫をしたら、美味しい介護食や嚥下食になるよって伝えられるように、介護食・えんげ食のお料理教室をされているEat Care Create言語聴覚士のえりさんに習ってきました。
そこでの会話から学びが大きく、共有させていただきます。

《お料理教室の様子》

えりさんのご自宅にお伺いさせてもらい、生徒さんは私ともう1人。
私のお仕事バックやえりさんのデリソフター(嚥下食を作成できる便利調理家電)の持ち運びの特注バックを作成してくれたすみれさん。

当日はやわらかい介護食を習いました。
メニューは
・イカのふわっふわの揚げ団子
・中華粥
・クリーミーこくうま豆腐柚子味噌風味

イカは硬くて介護食や嚥下食とは遠い食材なのかなと思っていましたが、ミキサーにかけてなめらかにしてはんぺんと合わせ、お野菜たちと一緒にお団子にすることでとってもやわらかく、美味しくいただけました!
中華粥はかぶやホタテなど身体が喜ぶ食材と共に、生姜がよく効いて寒い毎日に心も身体もあったかくしてくれます。

《経管栄養の方へ効果的な関わり》

お料理をしながら、
利用者さんの話などたくさんさせていただきました。

必要カロリー栄養は胃瘻(経管栄養)から摂取されている患者さん。
胃瘻とは、胃に小さな穴をあけ、お腹にカテーテル(管)を取り付けることで口を介さず直接栄養を摂取する栄養補給方法です。
言語聴覚士は再び、口から食事を美味しく味わえるよう機能評価や嚥下訓練をします。その方も、ゼリー状のものやペースト状のものが食べられるようになってきておられました。

3人で味わった中華粥やイカのお団子はできたてでとてもあたたかく、身体も心もポカポカになりました。

しかし、経管栄養で注入する栄養剤は常温においてても冷たくて、直接身体の準備ができてない状態で胃に入ります。
栄養剤を高熱加熱は、栄養成分が壊れてしまうため温めることはできないようです。

消化器系の合併症、例えば下痢や嘔吐、腹痛、腹部膨満感などが起こることがあります。その対処として、病院では投与速度や量を調整したり、液体から半固形化栄養剤に変更したり、成分を調整する(脂肪は多くないか?食物繊維は入っているか?浸透圧は高くないか?など)ことで改善を試みていました。

えりさんの視点は、
栄養剤を注入する前に、食べられるものの匂いを感じてもらい、少しでもいいから経口から味わってもらうことが大事と教えてくださいました。
匂いを嗅ぐことで、口や舌を動かし、味わうことで身体が栄養を吸収するための準備ができるんですね!!
食べ物は、口から入り、胃や腸で消化吸収され、肛門から排出されます。
舌が動くことで、唾液が分泌されることで、胃液を始めとした消化液が次々に分泌されます。胃が動き、小腸が動き、大腸が動いて身体の栄養として吸収されるのです。

下図のように、TPN(中心静脈栄養)などの点滴のみで絶食期間が1週間になると消化に重要な小腸の絨毛上皮は半分ほどに萎縮してしまいます。経口摂取をしていないことによる身体への影響は大きく、この状態の消化器官に栄養剤が投与されても十分に栄養として吸収できないのです。口から少しでも味わい、身体が栄養を吸収できる準備が必要なのです。

東口他,絶食による小腸絨毛上皮の組織学的変化,2009

他にも、経管栄養中におしゃぶりを使用した早産児は栄養耐性が改善されて、体重が増加し、経管栄養から経口哺乳への移行が加速されるとの報告があります。(medela HP)

赤ちゃんから高齢者まで、少しでも口から味わえるということが家族のだんらんにも、身体機能としての栄養吸収にもとてもとても重要だと再認識できました。
もちろん、言語聴覚士として最大限機能改善にアプローチしていきますが、その経過の中で、家族で囲める美味しい介護食や嚥下食を提供できること、繋いでいけること、諦めずにチャレンジしていきたいと思います!

《参考文献》

東口高志ほか,Gultamine-Fiber-Oligosaccharide(GFO)enteral formulaの経静脈栄養実施時における腸粘膜の形態的・機能的変化に対する効果の実験的研究,外科と代謝・栄養,43(4):51-60,2009
medela HP:
https://www.medela.jp/breastfeeding-professionals/services/downloads

全国の悩んでいるセラピストに届くように、臨床のヒントとなり患者さんがよくなるように、心を込めて書いています。応援よろしくお願いいたします❣️