見出し画像

触れるべきでない課題の話

スタートアップをやっていると回転寿司のように、課題が次から次に目の前に流れてくるような感覚になるのは私だけだろうか。とはいってもすべての課題の皿を片っ端から処理するのが悪手だということは誰の目からも明らかで、我々はその中から重要そうな課題を選び取って一つ一つ解決していくしかない。しかも事業・組織が成長すればするほど課題の流速は上がるが減ることはない。

流れてくる課題の皿の中には触れるべきでない課題もたくさんあるように思う。名著「イシューからはじめよ」にもそのようなことが書いてあったように思うが、自分たちがスタートアップをやっているとそれ以外にも触れるべきでない課題はあるように思う。今回は特に触れるべきでないスタートアップ2大課題の話をしたい。

触れるべきでない課題① 「大変なのに効果が小さいもの」

解決する難易度が高い(時間がかかる等)のに、解決したときの影響度が小さかったり測りづらいものは触れるべきでないと考えている。
例えば「日本人は自分のキャリアへの意識が低い」という課題があったとしたときに「じゃあキャリア教育をしよう」というのはこれに近いものを感じる。今から教育課程に組み込む難易度…成果が出るまでの時間…その結果の予測のしづらさ…。一概にこれが絶対にダメなわけではないけれども、それであれば実現可能性があって比較的短期で成果が見込める課題から選ぶ(もしくはそのレベルまで課題を分解する)べきだと考えている。
プロダクト開発なら「なんとなくデザインを全体的にシュッとしたい!」とか、人事であれば「採用枠1名のポジションについて採用ブランディングをやろう!」とかもこれに近いものを感じる。解決にかかるコストや期間に対して、効果が小さいもしくは見積もりづらい課題はいたるところに転がっている。

触れるべきでない課題② 「過去あったもの」

これは特にスタートアップという成長を前提とした有機体だからこそあるあるの話だと思うのだが、あまり言及されてこなかったようにも思うので特に注意したい落とし穴だ。
具体的に言うと「過去はあったのに今はない」ものをそのまま課題として認識しないで欲しい、という話だ。
例えば、あなたが3人で立ち上げたスタートアップが成功して1,000人の会社になった状況を想像してほしい。起業当時、代表であるあなたは3人で密に連携し会社について知らないことは何もなかった。それが1,000人になると顔さえ知らないメンバーもいるし、代表とはいえ全てを知ることは不可能になる。それを「過去はできたのに!」という理由で課題とするべきではないという話だ。言うまでもないが、1,000人の会社で全員のことやすべてを把握しようとすることほど不毛なことはない。この例はかなり極端なのだけれど、では50人のタイミングではどうだろう。1,000人とまではいかないが少なからずメンバーが増えて何かを得ている反面、何かは失うのは当然のことである。
「他部署との距離が遠くなった」や「ステークホルダーが増えた」、「社内に気の合わない人がいる」とかもこの類な気がする。それらを事実として認識するのは良いものの、完璧な解決を目指すべき課題ではないように思う。

スタートアップの場合、暗黙の了解で、事業も組織も拡大するという「決断」をしている。決断、決めるということは何かを得て何かを捨てるという、等価交換の場だと理解するべきだと思う。
組織が大きくなる、事業が大きくなる、お客さんが増えるというのは何かを得ている反面、何かを捨てているはずだ。その捨てたものを拾いに行くだけの課題選定は徒労に終わることが多いので、それは過去に捨てたという認識を持って前進するのが重要だと考えている。我々に全てを得ることは無理だ。

そんなわけでよくある落とし穴課題の話をしたのだけれど、これらは人間の感情を揺さぶりやすいという特徴も持っているような気がする。特に人間は過去のものにノスタルジックな気持ちになる。自分も息子の「みてね」を見返しては赤ちゃんの頃特有のムチムチ感が恋しくなるのだが、それはもう戻らないし、戻すことに意味はなく成長を楽しむしかないのである。それはスタートアップも同じなのではないだろうか。
そのことを理解したうえで、自分が取り組もうとしている課題が「大変なのに効果が小さいもの」や「過去あったもの」という罠にハマっていないか、今一度考えて見てもよいかもしれない。


【PR】YOUTRUSTでは仲間を募集しています🤝


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?