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手放した物語と残した物語

休職期間中にかなり本を処分した。

私はあんまり新しい小説を読まない。代わりに一度読んで好きになった作品は10回以上読む。小説でなくても映画でもドラマでも漫画でも、ストーリーが分かっていても何度も味わう。

私が今年手放した小説は多分20回以上読んだ作品もあると思う。海外にいると意外と時間があるから何度も読んでしまう。飛行機とか映画が観れない場合は本は最強である。

私のバイブル的だった本たち。

氷点 三浦綾子
永遠の仔 天童荒太
右岸・左岸 辻仁成・江國香織
恋愛中毒 山本文緒
ふがいない僕は空を見た 窪美澄
イノセントデイズ 早見和真

完全な共通点ではないと思うが、どれも親子関係と依存・執着について描かれていると思う。少なくとも私はそう感じた。どの本も信じられないほどにのめり込んで読んでしまっていた。初めて読んだ時は大体3日くらい引きずっていた。それでも何度も読んでしまうほど好きな作品たちだった。

私は自分の生まれとか親との関係とかすごく嫌で、だから自分より不幸な生い立ちの人、苦しんでる人を無意識に探していたのではと思う。そういう意味で氷点や永遠の仔は特に自分にとって重要な作品だったと思う。自分とは異なる形で苦しむ主人公たちに自分を重ねたり、比べたり。苦しいけど幸せを探す姿を痛々しくもどこかどこか嬉しく見ていたんだと思う。

全て手放してしまった。手放す時は本当にそれでいいのかと悩んだけど、たぶん自分なりに読み切った、サヨナラする時だって感じていたからか、手放してからはあまり思い出さない。でもふと、「あ、これ左岸の茉莉っぽい」とか「この人、永遠の仔のジラフっぽい」とか「今の私、恋愛中毒の水無月だ!」とか、思い出す。完全に私の一部になっているのだなと感じる。

最後まで悩んで手放さなかった本が一冊。

眠れぬ真珠 石田衣良

たぶん一番好きな小説だと思う。私に恋愛というものを戻してくれた作品。だんだんと主人公の咲世子の年齢に近づいてきて、さらにこの作品が好きになった。歳を重ねることでしか分からないこと、感じられないことを教えてくれる作品。これに迫る感じでグッと来たのが、喋々喃々(小川糸)かな。でも衝撃としては眠れぬ真珠の方がやはり強かったと思う。

一つのことに固執しない。大事。でも何かを大切にとっておくことも大事。手放した物語たちは今も自分の中にちゃんと生きてるし、意味があるから、真の意味で手放していない、融合?取り込み?合体?、どれでもいいけどちゃんといるのだ。

眠れぬ真珠を手放すときは来るのだろうか。淋しいような、楽しみなような。久々に読もうかな。