島ひるごはん vol.7「ハーブ🌿、 ときどきソバ」
今回の「島びと」は、島に住む蕎麦好きで知らない人はいない?「あべちゃん」こと阿部和泉さんです。
うどん県にあるここ小豆島では珍しい、蕎麦を打つ女性として知られるあべちゃんが、島で有数の観光地・道の駅 小豆島オリーブ公園にお勤めと聞き訪ねてみました。
広大な「道の駅 小豆島オリーブ公園」敷地内には多くの施設が配置されていますが、そのひとつがハーブガーデンです。
園内には何度も足を運んだことがありましたが、ハーブガーデンはこれまで盲点となっていたようで、この時が初めての訪問でした。
ハーブガーデンエリア内の施設「ハーブガーデン温室」に入るとすぐに目に入ったのが、何やら作業中のあべちゃんの後ろ姿。
作成中だったのは、公園内のマップでした。
来園者に園内の他の施設への道を尋ねられる事が多いそうですが、ハーブガーデンでの接客・販売・ハーブ等植物の管理等マルチタスクを1人でこなすことの多いあべちゃんにとっては対策が必要な課題でした。
そこで思いついたのが、園内マップ。
手早く完成させたイラストバップの配置を考えるあべちゃん。
分かりやすい園内情報を来場者に提供すると同時に、黒板に手書き調のアイテムが温室前の雰囲気をさらに盛り上げていました。
インスタ映えを求めて足を運ぶ来園者が多い道の駅 小豆島オリーブ公園。
温室内のデザインも手を抜くわけにはいきません。
温室内は思わず足を止めたくなる楽しい演出の数々。
訪れた人々にガーデニングの魅力を少しでも伝えたいと話すあべちゃんの手によるものも多く、中には島在住の作家とのコラボ作品も。
ハーブ関係の経験はなく現職に就いたというあべちゃんは、日々ハーブやガーデニングについて独学に励みながらも、知識も経験も豊富なガーデナーの柴田さんの知恵を借りることも多いそう。
出勤日が合わない事の多い柴田さんの教えを請いに、休み返上で職場に出向くこともあるほど知識習得に励むあべちゃん。
と言っても気負いはなく、教室と化した庭園を舞台に交わされる先輩との自由なやり取りはとても自然で、理想的な師弟関係を築かれているようでした。
あべちゃんのハーブへの探究熱の高さは、彼女のお昼ごはんにも現れています。
料理が得意なあべちゃんのこの日のお昼ごはんは、パンから手作りのサンドイッチ!
温室で栽培するチャイブをその場で挟み、同じく温室の隅で熟れていたミニトマトとイタリアンパセリの即席スープも手早く用意され、あっという間にカフェメニューのようなお洒落ランチが完成です!
温室で栽培するハーブなどを使ったアレンジレシピをお昼ごはんで試すことが多いというあべちゃん。
五感を使ってハーブを体感し習得しようとする意気込みを感じます。
ハーブの中で1番お好きだというレモンバームを主としたお手製のブレンドハーブティーは私も試飲させて頂きましたが、これまで飲んできたどのハーブティーより香りがよく後に残らない爽快さでスッキリしました!
あべちゃんランチがあまりにも素敵すぎてもう少し見てみたくなり、次の日もお昼休みの時間にお邪魔しました。
この日のあべちゃんのランチは、乾燥バジルとチーズのパン(こちらも手作り)にお好きなレモンバームを添えたサラダ。
この日も、ハーブを使用した彩り鮮やかな手作りヘルシーランチ!
ティーバッグの紅茶にもフレッシュハーブがいつの間にか添えられていました。
念の為、さらにもう1日!
ランチ取材3日目のこの日は、
本格的インドカレーにインドの漬物アチャールを添えて〜
鮮やかなターメリックライスは炊飯器ごと、複数のスパイスに温室で育つ新鮮なカレーリーフを加えてじっくり煮込まれたカレーは鍋ごと自宅から運ばれていました。
インド暮らしの間、ほぼ毎日現地の人と同じ食事をしていた経験から言い切らせて頂くと、インド料理の決め手はなんと言っても香りです。
香ばしくも清涼感のあるスパイスとハーブの芳しい香りに包まれた事務所で私も久々に本格的なインドの味を美味しく試食させて頂きました。
ハーブガーデンを訪れる人びとの中には、ハーブの育て方はもちろんその用法について質問をされる方も多いそうで最も興味を持たれるのが料理での活用法。
ハーブを使ったレシピの試作・及び試食の積み重ねによって、あべちゃんはハーブガーデン担当者としての力量を着実に磨かれているようでした。
そんなあべちゃんの休日にも密着させて頂きました。
いつもエネルギッシュなオーラを纏うあべちゃんの休日は、朝からとてもアクティブ。
罠猟免許所有者で近所のちょっと年上のご友人M氏の日課である罠の見回りに同行に、私も連れて行っていただきました。
他の地方に違わず小豆島内でも、害獣による農作物の被害が発生しています。
この日の罠点検では、20数箇所のうち1つの罠で獣が足を引っ掛けたらしい形跡が見つかりました。
もしも獣がかかっていた場合は諸々の事後処理🐗🗡を行うことになります。
最近ではベテランのM氏の指導の下、あべちゃんもその作業に加わるようになったそうです。
様々なことに好奇心と行動力を全開に、経験値を上げているあべちゃん。
罠点検が一段落し、休憩を取ることに。
「少し早めのお昼ごはんに」と、これまた素敵なお弁当をあべちゃんが用意してくれていました!(私の分まで!!)
春に採取し作ったという立派な竹の子の皮の包みを開くと、
蕎麦の実ごはんのおにぎりに、この山で仕留めた鹿肉のチャーシュー(M氏作)、知人が飼う平飼い鶏の卵のだし巻きとナスのお漬物。
山歩きを盛り上げるお弁当にこれ以上のコーディネートがあるでしょうか?!
山歩き中ずっと肩に下げられていた重そうな魔法瓶からは、温かく香ばしい蕎麦茶を注いで頂き山中での思わぬホスピタリティーの数々に感動。
ご相伴にあずかった私は完食を惜しみつつ、最後まで美味しく頂いたのでした。
そして午後からは知人の工房に場所を移し、いよいよ気になるあべちゃんによる蕎麦打ちです!
蕎麦打ちの工程を一部始終見学するのが初めてなら、女性が蕎麦を打つ姿を直接見るのも初めてでした。
かなりの重労働のイメージがありますが、蕎麦の産地では花嫁修行の一つとされていた地域もあったとか。
蕎麦粉は故郷から取り寄せた群馬産を使用した二八そば。
手際良く練っていく無駄のないあべちゃんの手元に見惚れているうちに、あっという間に綺麗な菊練りに、
角出しとも呼ばれる完璧な円錐形の生地を押し潰し、
計3本のめん棒を巧みに操り、厚さと縦横のバランスを見ながら伸ばしていきます。
伸ばした生地を畳み、蕎麦切り包丁で均等にリズムよく切って。
と、ここまでで約40分。
手早さもポイントとなる蕎麦打ちで理想的な時間です。
今回は、お友達への結婚祝いにと打たれたそうですが、書が得意な旧友による「あべ処」と入ったのし紙も本格的。
この蕎麦に合うように開発された蕎麦つゆもあべちゃんの手作りで、かえしには小豆島の醤油が使われています。
打ちたて茹でたての蕎麦は見るからに艶が際立って美味しそう。
こちらも少し試食させて頂きましたが、香りも喉越しもとても良くいくらでも食べていられそうでした!
それもそのはずで、あべちゃんは農業高校在籍時から蕎麦打ちの腕を磨かれていて、蕎麦打ち大会では優勝経験もあり!
蕎麦職人として海外からお誘いを受けたこともあったそうです。
和泉さんの蕎麦の評判はいつの間にか島内外で広がり、現在では様々なオファーがあり、本業のハーブガーデンがお休みの日にできる範囲で対応中とのことです。
公私共に充実した日々を送るあべちゃんの交友範囲は多岐に渡ります。
彼女の話には、尊敬する島の人物から今でも連絡を取り合う高校時代の恩師など様々な人との広くで深い交流エピソードが絶えません。
彼女のエネルギーが磁石のように周りの人々を惹きつけ、そんな人々との関係を大切にし続けてきたあべちゃん。
若くともすでに大きな財産を築かれているようです。
猫にも好かれます。
小豆島では10月から本格的にオリーブの収穫シーズンを迎えました。
ハーブだけでなく、道の駅 小豆島オリーブ公園内に豊富に栽培されるオリーブの木の枝を使った商品開発やワークショップの企画にも意欲を見せるあべちゃん。
今後もあべちゃんの豊かな発想力や行動力が島内あちこちでどのように発揮されていくのか、目が離せません!
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