少女詩1ー「楽園考」

B5メモ帳よりサルベージ

「楽園考」

ある一人の少女が立ち上がる
軽やかなリズム帯の渦から
しなやかな腕をぴんとあげる。

震える桃色の唇、粘膜から成る拡散器

〈違います。ほんとは未開なんてないのです。
不条理を何より憎み、
死者どころか霊魂まで葬り去ったあなたたちが、
意地悪く我々を、そう呼んでいるだけで。〉

私たちは、もともと楽器なのだから。

「これで最後なんだよ。」
そう言い聞かせても、ものわかりの悪い君は、
何度もクッキー缶をこつこつ叩いた。

そうだ、叩いたら増えると、5年前に
カメラマンのおじちゃんが教えてくれたっけ。

やがてリズムになる。
スカートへ、星みたいにこぼしたのにもかまわず、
私は「踊ろう」と立ち上がった。
君は黙ってクッキー缶を3回叩く。


私たちは踊った。
草むらの向こうから声がする。
「見ろ!秘境の儀式だ、生贄はどこだ。」

知らないことが恐ろしいなんて 脆弱な魂だね
私たちは今、精霊そのものになって、未知なる青い火を囲んでる。
恍惚の中に無限の花畑をみている。

彼岸の豊かさに、私たちは興味がない。

ここには全てがあるよ
虫も鳥も空も風も。

その全てを喰らい、またその全てに喰われる円環!

欠番なき私たちの楽園を
どうか放っておいて。

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