少女詩1ー「楽園考」
B5メモ帳よりサルベージ
「楽園考」
ある一人の少女が立ち上がる
軽やかなリズム帯の渦から
しなやかな腕をぴんとあげる。
震える桃色の唇、粘膜から成る拡散器
〈違います。ほんとは未開なんてないのです。
不条理を何より憎み、
死者どころか霊魂まで葬り去ったあなたたちが、
意地悪く我々を、そう呼んでいるだけで。〉
私たちは、もともと楽器なのだから。
*
「これで最後なんだよ。」
そう言い聞かせても、ものわかりの悪い君は、
何度もクッキー缶をこつこつ叩いた。
そうだ、叩いたら増えると、5年前に
カメラマンのおじちゃんが教えてくれたっけ。
やがてリズムになる。
スカートへ、星みたいにこぼしたのにもかまわず、
私は「踊ろう」と立ち上がった。
君は黙ってクッキー缶を3回叩く。
私たちは踊った。
草むらの向こうから声がする。
「見ろ!秘境の儀式だ、生贄はどこだ。」
知らないことが恐ろしいなんて 脆弱な魂だね
私たちは今、精霊そのものになって、未知なる青い火を囲んでる。
恍惚の中に無限の花畑をみている。
彼岸の豊かさに、私たちは興味がない。
ここには全てがあるよ
虫も鳥も空も風も。
その全てを喰らい、またその全てに喰われる円環!
欠番なき私たちの楽園を
どうか放っておいて。
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