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ゆべ小説

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ゆべしちゃんが書いた小説とかです。 幻想怪奇っぽくなってたらいいなあ。
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#猫

海上の道

海上の道

潮騒に混じる呼び声で目が覚めた。

「旦那さま、旦那さま…」

まだ夜が明けぬ暗闇の中、目を凝らして声の主を見極めると、一ヶ月前から行方がわからなくなっていた飼い猫のハルが枕元にいた。

「起きてくださいまし」

そのハルが口を利いている。
私は一瞬、行方のしれぬ老猫を心配し続けたせいでおかしな夢を見ているのかと思った。しかし肌を切るようなニ月の寒さはまさしく現実のものであるように感じられた。

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